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学校法人日本医科大学

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がん特集  最新情報 胃がん

「胃がん」は長年にわたり、日本人のかかるがんの第一位でした。そのため私たちにとって、身近ながんといえるでしょう。最近は減少傾向にあるとはいえ、いまだに高い罹患率・死亡率となっています。しかし研究が進み、原因や予防法について明らかになってきています。 今回は、日本医科大学付属病院消化器・肝臓内科の河越哲郎(かわごえ・てつろう)先生にお話を伺いました。

「胃がん」は長年にわたり、日本人のかかるがんの第一位でした。そのため私たちにとって、身近ながんといえるでしょう。最近は減少傾向にあるとはいえ、いまだに高い罹患率・死亡率となっています。しかし研究が進み、原因や予防法について明らかになってきています。
今回は、日本医科大学付属病院消化器・肝臓内科の河越哲郎(かわごえ・てつろう)先生にお話を伺いました。

胃がんとは?

図1:最新の統計データによる死亡率と罹患率 が高いがんの部位 (出典:がん情報サービス「最新がん統計」より一部改変)胃がんとは、胃から発生する悪性腫瘍です。長年、日本人のかかるがんの中では罹患率・死亡率ともに第一位でしたが、最近は減少傾向にあります。しかし、最新の統計でも死亡率で第三位、罹患率で第二位となっており、今なお非常に身近な病気といえます(図1)。
胃の壁の構造というのは、簡単にいうと内側から粘膜層、粘膜下層、筋層の3層になっています。一般的な胃がんは、この粘膜層の上皮細胞が制御不能の異常増殖を起こしたものです。上皮以外の組織から発生する悪性腫瘍にはGIST(Gastro intestinal Stromal Tumor)や悪性リンパ腫などがありますが、今回は一般的な胃がんについてご説明したいと思います。

胃がんの原因について

図2:ピロリ菌による胃がん発生割合 (出典:Uemura N.:N.Engl.J. Med.345,784,2001より一部改変)最大の原因はピロリ菌です。1994年には国際がん研究機関が「ピロリ菌は胃がんの病原体である」と発表しました。さまざまな研究からも、ピロリ菌感染のない人からは胃がんはほぼ発生しないという結果が得られています(図2)。
ピロリ菌の感染経路として可能性が高いのは、経口感染です。具体的には、保菌している親からの離乳食の口移しや、感染者の糞便に汚染された水や食品からの感染が挙げられます。ほとんどの感染は免疫力の不十分な幼少期に起こります。一度感染すると除菌しない限りは無くならず、慢性胃炎や十二指腸潰瘍、胃のポリープ、胃がんなどを引き起こします。現在日本では、50歳以上の方で7割以上、全体では5000万人が感染しているといわれています。
ピロリ菌以外の原因は、塩分の過剰摂取、喫煙、果物や野菜不足が挙げられます。胃がんになりやすい家系があるという研究もありますが、遺伝的な要因というよりは食生活やピロリ菌感染が原因である可能性の方が高いようです。

胃がんの予防について

最も重要なのはピロリ菌に感染しないことです。衛生面に気を配り、乳幼児には口移しで食事を与えないでください。感染している場合は、除菌することが望ましいです。最近では新薬の登場により除菌の成功率も9割近くになっています。
次に禁煙、塩分を控える、野菜や果物を多く摂取することが予防に繋がります。そして、早期発見のためには症状のない段階でも定期的な検査を受けることをお勧めします。

胃がんの検査について

日本では厚生労働省が定めた指針を基に、科学的根拠に基づく「胃がん検診」が市町村ごとに実施されています。具体的には50歳以上の方に対して2年に1回、問診に加えて胃のX線検査もしくは胃の内視鏡検査が行われています。
胃のX線検査については、検診で行われることが多いですが、大きな病変は発見出来るものの、小さな病変を見つけることが難しい場合があるため、最近では胃痛や吐き気などの症状がある患者さんに対しては、内視鏡検査を行うのが一般的です。
内視鏡は、5㎜ほどの病変でも確認出来ます。最近はズーム機能がついていたり、光の波長を制御してわずかに粘膜が厚くなっている部分を強調することが出来たりと内視鏡はますます進化しています。がんの診断というのは組織を顕微鏡で観察して病理学的に行うことが必要であり、内視鏡は病変を見つけてから、実際に鉗子(かんし)を使って組織を採取出来ることが大きなメリットです。
さらに、最近では「ABC検診」という検診が行われることもあります。これは、採血でピロリ菌の抗体と胃の粘膜から分泌されるペプシノーゲンの検査を行うものです。ペプシノーゲンは胃粘膜の萎縮度を示すもので、粘膜萎縮のある慢性胃炎があるかどうかが分かります。この結果を組み合わせて胃がんのリスクをA~Dの4群に分けて評価します。ただしABC検診はあくまで胃がんのリスクを明らかにするもので、胃がんを直接発見する検査ではありません。

プロフィール

河越 哲郎TETSURO KAWAGOE

日本医科大学大学院内科学(消化器内科学)講師
日本医科大学付属病院消化器・肝臓内科医局長

【 経歴 】
1995年 日本医科大学付属病院第3内科入局
2007年 同愛記念病院内科医長
2008年 日本医科大学付属病院消化器内科助教
2010年 日本医科大学付属病院病院講師
2015年 日本医科大学付属病院消化器・肝臓内科医局長
2016年 日本医科大学消化器内科学講師(定員外)

専門分野:消化管がんの化学療法
専門医:日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、癌治療認定医、日本消化管学会胃腸科認定医

 

こちらの記事は「意気健康 19冬号(2016年12月発行)」の巻頭特集に掲載されたものです。
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