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体が発するSOS  せき

Webマガジン 体が発するSOS 日本医科大学武蔵小杉病院呼吸器内科 臼杵 二郎 うすき・じろう せき

せきは、あまりにも身近な症状であるため、少しせき込むようなことがあっても医療機関を受診する方はあまり多くはいらっしゃらないでしょう。実際、ほとんどのせきの症状は、大きな病気が原因で起きているものではありません。しかし中には、がんや肺炎など、出来るだけ早い診察・治療が必要となるケースもあります。診察を受けるべきせきの状態や、せきが症状として現れる重篤な疾患とその治療法について、日本医科大学武蔵小杉病院呼吸器内科の臼杵 二郎(うすき・じろう)先生にお話を伺いました。

せきとは?

せきは、医学用語では咳嗽と呼ばれ、気道(空気の通り道)に留まっている分泌物や吸い込まれた異物を気道の外に出そうとして、体が反射的に行う防御反応です。声門の閉鎖とともに呼吸に使われる筋肉(横隔膜や肋骨の間の筋肉)が収縮し、急激な圧力が加わった後に瞬間的に声門が開き、せきになります。体に備わっている防御反応ですので、長期間続かなければ基本的に悪いものではありません。

せきの原因について

図1:咳嗽の分類(出典:咳嗽に関するガイドライン第2版) 気管支など気道の表面やその壁の平滑筋にせきを発生させる受容体があり、その部分が刺激されることでせきが起こります。
せきは大きく分けると、症状の出はじめから3週目までの急性、8週目までの遷延性、それ以上の期間にわたる慢性のせきに区分されます(図1)。また、体の外に痰を出すために反射的に発生する湿性咳嗽、痰を伴わない乾性咳嗽とに分けられます。
年齢によって長引くせきの原因となる基礎疾患は異なる傾向にあり、子どもであれば小児科特有の疾患、高齢者であれば肺がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、若い世代にはマイコプラズマ肺炎などが多くみられます。なお以前は、マイコプラズマ肺炎は若い方特有の病気であると思われていましたが、最近では検査キットの改良により高齢者でも感染している患者さんが一定数いることも分かっています。
せきという行為自体が病名であるように思われがちですが、これは症状の一つであり疾患ではありません。さらに胃酸の逆流や、鼻に疾患を持つ場合、心因性の精神的な問題を原因としても発生することがあるなど、肺以外に原因がある場合でも、せきが症状として現れることがあります。

せきを症状とする疾患について

大部分のせきは、いわゆる風邪を原因とするもので、時間とともに治ります。問題があるのは2~3週間以上続くもので、その場合には風邪以外の原因を考え診断を行わなければなりません。他にどのような症状があるのかが、診断における大切な判断基準になります。たとえば、呼吸が苦しい、熱がある、全身の倦怠感があるなどです。せきが出ている期間が2~3週間以内であっても、これらの症状がある場合には重大な病気が隠れている可能性がありますので、早めの検査をお勧めします。
せきを起こす疾患で一番多いものは、前述のように風邪を含めた感染症です。ウイルスや細菌など微生物の気道感染によって炎症が起こり、気道表面に傷が出来ることにより、せきが出やすい状態になります。長引くせきの場合には、感染性疾患以外である可能性が高くなります。感染症のうち百日咳やマイコプラズマ肺炎は長引くことがありますが、せき喘息をはじめとするアレルギーが関与する疾患の可能性が増えてきます。
図2:8週間以上続くせきの3大疾患 慢性のせきの原因となる疾患として多いものは、せき喘息(病気の成り立ちは喘息に似ているが、症状はせきだけの疾患)、アトピー咳嗽(気道の蕁麻疹のような疾患)、副鼻腔気管支症候群(慢性の蓄膿症と気管支炎を合併した疾患)で、これらはせきの三大疾患と呼ばれています(図2)。

注意すべきなのは、重症にみえにくいせきの場合でも、せきの自覚がある患者さんの全体数からみた場合、決して数は多くありませんが、肺がんやCOPDといった重大な疾患が隠れている可能性があることです。特に高齢の患者さんの場合には、結核に感染していないかの注意も必要です。せきの症状だけにとどまりませんが、息が苦しいと感じる、はあはあとつらそうに呼吸をしている、全身の状態がいつもと比べて悪くみえるなどの様子が感じられた場合は、緊急の受診を検討することが望ましいでしょう。

プロフィール

臼杵 二郎先生


【 経歴 】
略歴:
1987年 日本医科大学卒業
1995年 日本医科大学大学院卒業
             米国国立衛生研究所(NIH)/米国心肺血液研究所(NHLBI)留学
1998年 日本医科大学第四内科助手
2004年 日本医科大学第四内科講師
2010年 日本私立学校振興・共済事業団 東京臨海病院呼吸器内科部長
2011年 日本医科大学武蔵小杉病院呼吸器内科部長

専門分野:
呼吸器疾患、特に間質性肺炎をはじめとするびまん性肺疾患の病態研究、および診療

資格:
日本呼吸器学会専門医・指導医、認定内科医

公的役職:
日本呼吸器学会代議員、川崎市感染症診査協議会委員、厚生労働省難治性膵疾患研究班研究協力者

 

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こちらの記事は「意気健康 14秋号」の巻頭特集に掲載されたものです。