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女性の病気特集  骨粗鬆症

Webマガジン -知って深まる家族のキズナ-『女性の病気特集』part.4 骨粗鬆症 日本医科大学付属病院整形外科 部長 高井 信朗

国内で1300万人近い方が患っているとされる骨粗鬆症。その多くは女性で、加齢に伴い発症し、骨折により運動機能の低下を招くことで、日常生活に支障を及ぼす病気につながります。また骨粗鬆症は、新しい概念として近年広がっている「ロコモティブ・シンドローム(ロコモ)」の中核をなす疾患です。今回、骨粗鬆症や新しい概念である「ロコモ」について知っておきたい一般的な知識について、日本医科大学付属病院整形外科部長の髙井信朗(たかい・しんろう)先生にお話しを伺いました。

骨粗鬆症について

骨粗鬆症とは、文字どおり、骨に「鬆(す)が入る」状態を指します。骨は、図1のように、拡大すると網目状のスポンジのように見える内側の「海綿骨」と呼ばれる部分と、骨の外側を構成する硬くて緻密な「皮質骨」と呼ばれる部分から成り立っています。骨粗鬆症とは、この海綿骨の網目の「隙間」が多くなってしまう病気なのです(図2)。その結果、骨の強度が低下し、骨折しやすくなってしまいます。

図1:海綿骨と皮質骨図2:健常骨と骨粗鬆症の椎骨

骨粗鬆症の原因

では、なぜ骨に「鬆が入る」のでしょうか?そこには骨の代謝メカニズムが関係しています。骨は、骨を作る「骨芽細胞」と、骨を壊す「破骨細胞」のバランスによって成り立っていて、これを「骨のリモデリング」と呼びます。すなわち、骨芽細胞が骨を作る「骨形成」と、破骨細胞がそれを壊す「骨吸収」とがバランスを取りながら、常に新陳代謝が行われているのです。一般的には1年間に20〜30%の骨が代謝により入れ替わっていると考えられています(図3)。

図3:骨のリモデリング(骨形成と骨吸収)

さて一方で、骨の量は成長期に増加して、18歳までにピークに達することが分かっています。すなわち、成長期では骨のリモデリングにおいて、骨形成が骨吸収を上回っています。そしてピークから40歳頃までは、バランスが保たれ、骨量は変化しません。しかし、40歳を過ぎた頃から、骨量は減少していきます。すなわち、リモデリングのバランスが崩れて、骨吸収が骨形成を上回ってしまうのです(図4)。

図4:骨量の経年変化

骨粗鬆症とは、何らかの原因によってこのバランスが急激に崩れて、結果的に骨量が減少してしまう状態で、そのため、軽微な衝撃でも骨折を起こしやすくなってしまうのです。

骨粗鬆症の統計

骨粗鬆症の統計を見てみると、図5のように、圧倒的に女性が多いことが分かります。ガイドラインによると、骨粗鬆症の推定患者数は、男性が300万人、女性が980万人と、男性に比べて女性は3倍以上多く発症しているのです 1)。

図5骨粗鬆症が女性に多い理由は、女性ホルモンである「エストロゲン」が骨の形成に大きく関与しているからです。エストロゲンには、骨の代謝、特に「骨吸収」を抑える働きがあるため、女性の場合、閉経後にエストロゲン分泌が急激に減少すると、骨吸収が進み、骨リモデリングのバランスが崩れて、骨量が減ってしまうのです。

骨粗鬆症の症状

骨密度が下がって骨の中にうっ血が生じると、慢性的なズキズキとした鈍痛を夜間に感じることがありますが、一般的には骨粗鬆症そのものによる症状はほとんどありません。しかし、骨粗鬆症になると、軽微な衝撃でも骨折が生じやすくなり、最悪のケースでは寝たきりの状態になってしまうこともあります。骨折が起きやすい場所として股関節の足の付け根(大腿骨近位)がありますが、ここが折れてしまうと、歩けなくなるため日常生活が送れなくなり介護が必要になってしまうのです。このような状況に陥らないためにも、市区町村などが行う検診を積極的に受けて、骨粗鬆症を早期に発見することがとても大切です。

検査・診断について

図6:骨粗鬆症と骨密度骨粗鬆症の診察では、まず患者さんの体型を見て、診断を開始します。特に身長や姿勢などをよく観察します。身長の低下や姿勢の変化などは、骨粗鬆症になっているサインの一つになるからです。

次に、骨密度を測定するのですが、骨密度の評価は、通常は若い方の平均値と比較し、どの程度骨密度が低下したかを見る「YAM」という値で示されます。YAMとはYoung Adult Meanの略で20〜44歳の骨密度の平均値を表します。たとえば、YAM70%は、若い方の骨密度に比べて70%に低下していることを意味します。通常、骨粗鬆症と判断される値は、YAM70%未満とされています。YAM70〜80%は骨量が減少した状態と判断し、YAM80%以上が正常になります(図6)。一方、すでに脆弱性骨折が認められる場合はYAM80%未満でも骨粗鬆症と診断されます。

骨粗鬆症の予防法・治療法について

現在の医療では一旦低下した骨量を元に戻す方法はありません。そのため大事なことは、18歳時点における骨量のピーク値を、なるべく大きくすることなのです。骨密度を上げられるだけ上げることが必要になります。そのためカルシウムやタンパク質の摂取不足を招く発育期のダイエットは厳禁です。また、骨は、刺激によって強度を増すことが分かっています。適度な運動は、骨量が下がり始める30代、40代でも非常に大事です。

食事においては、カルシウムを積極的に摂取することが大事です。特に発育期には、牛乳などでカルシウムを摂取することが必要です。

次に治療法ですが、骨粗鬆症で用いる薬剤にはいくつか種類があります。たとえば、骨粗鬆症治療に広く使われている「ビスフォスフォネート製剤」は、骨吸収を行う破骨細胞を抑制し、骨密度を上げる効果があります。その結果、骨折を減らすことが出来るのですが、一方で、顎骨が壊死する副作用があり、注意が必要です。また、閉経によって低下した女性ホルモンの代わりとして使用される薬に選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:サーム)製剤、というものがあります。エストロゲンと同様の働きをする薬で、骨吸収を防ぎます。他にも、カルシウム製剤、ビタミンD、ビタミンK、副甲状腺ホルモンなど、目的によってさまざまな薬物療法を行います。

骨粗鬆症の予防・治療で大切なことは、必要な薬剤を継続的に服用し、適切な栄養バランスの食事をとることです。また、胃腸を整え、日光に当たることも大切な習慣となります。

ロコモティブ・シンドローム

図7:ロコモティブ・シンドローム近年、日本整形外科学会を中心に広がっている考え方に「ロコモティブ・シンドローム(ロコモ:運動器症候群)」があります。ロコモとは「運動器の障害」によって「要介護になる」リスクが高くなる状態を指します。我々人間の健康状態は運動器によって支えられている、ということを示す概念がロコモなのです。運動器が衰えると、体全体が衰えてしまいます。そのため、生活の質(QOL)を維持するためには、ロコモにならないことが大事で、その一つとして骨粗鬆症の予防が大切になってきます。たとえば、背中の椎骨が骨粗鬆症になり骨折が起きれば、体を起こすことが出来なくなります。その場合は、重度の寝たきりになる可能性が高く、QOLが一気に下がってしまいます。このように、骨粗鬆症はロコモのきっかけとなる疾患であり、膝の疾患である「変形性膝関節症」とともに、ロコモの中核をなす病気なのです(図7)。

これからの骨粗鬆症医療

骨粗鬆症は、単独の疾患と見るよりは、ロコモティブ・シンドロームという大きなテーマの中で捉えるべき疾患です。骨粗鬆症と変形膝関節症はロコモの中心をなす疾患ですので、教育機関でもある大学病院は、その啓蒙活動を行う必要があります。

将来的には「ロコモ外来」を展開し、肥満や痩身の方、糖尿病、動脈硬化の方など、ロコモにつながる状態の方々に対して、予防のための具体的な指導を行うと同時に、診療科横断的な治療活動を行う必要があると思われます。:(構成:ブランド推進室)

参考文献
1)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011版

(このインタビューは2014年1月取材のものです。)

プロフィール

高井 信朗

 

こちらの記事は「意気健康 08春号」の女性の病気特集に掲載されたものです。