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子どもの病気特集  子どもの心臓病

Webマガジン 家族のために知っておきたい医学知識、子どもの病気特集・子どもの心臓病 深澤隆治

医療の発達に伴い、子どもに心臓病があることが判明しても、現在では適切な治療によって治すことが出来るようになってきています。心臓病にはさまざまなタイプがありますが、いずれにしても早期の発見と正しい治療を行うことが大切です。今回は日本医科大学付属病院小児科の深澤隆治(ふかざわ・りゅうじ)先生に子どもの心臓病についてお話を伺いました。

子どもの心臓病とは?

子どもの心臓病には大きく分けて先天性と後天性の二つがあります(図1)。先天性の心臓病は生まれつき心臓に穴があいていたり、心臓の形が本来の形をしていなかったりするものです。後天性の心臓病では、川崎病やリウマチ熱、心筋症が有名です。川崎病とは、主に乳幼児がかかる全身の血管に炎症が起こる病気です。発見者の名前から川崎病と呼ばれています。

子どもの病気特集:子どもの心臓病 図1

 

子どもの心臓病 原因と症状について

子どもの病気特集:子どもの心臓病 図2約100人に一人は産まれたときに、小さな異常も含めれば心臓になんらかの問題があり、先天性の病気の中で一番多いのが心臓病です。
先天性の心臓病については多くの要因が影響しているため、はっきりとした理由が分からないことがほとんどです。遺伝的な要因もありますが、90%以上はその他の影響によるものです。先天性心疾患にも多くの種類があるのですが、なかでも心室中隔欠損症は症例が一番多く代表的な疾患の一つです(図2)。これは心臓の左右の心室に穴があいている病気で、先天性心疾患の60%を占め、新生児の千人に3人の割合で発生します。この病気ではチアノーゼは認めません。小さな穴であれば1歳頃までに自然に塞がるのですが、穴が大きい場合や、塞がりにくい場所である場合には手術が必要になります。もう一つ、チアノーゼをきたす先天性の心疾患の代表としてファロー四徴症という病気があります(図3)。心室中隔欠損症、肺動脈狭窄症、大動脈騎乗、右心室肥大の4つが合併した心臓病です。これは心室中隔欠損症と異なり血中の酸素濃度が低下することで起こるチアノーゼを伴うため、判明した場合には必ず手術治療が必要となります。

子どもの病気特集:子どもの心臓病 図3

また、生まれたときは健康でも、小児期に心臓病にかかることもあり、後天性心疾患と呼びます。このような後天的心疾患の代表例である川崎病は、全身の血管に炎症が起き、高熱が長く続き、手や足、唇、目が赤くなったりします。発症年齢は4歳以下が80%以上を占め、特に生後6カ月~1歳に多い病気です。2010年までの患者総数は27万人以上となり、日本では患者数が増加傾向にあります。多くは治療により1~2週間で症状が治まりますが、治療に反応しない場合、冠動脈瘤などの心合併症が起きやすくなるため、心筋梗塞や突然死などを起こすリスクが高まり大変危険です。この病気に関しては、急性期の炎症反応を適切な治療により可能な限り早く終わらせ、冠動脈瘤などの形成を予防することが重要です。現在では病気の研究が進み、冠動脈瘤などが出来た場合でも適切な治療により、ほとんどの症例で通常の日常生活を送ることが出来るようになっています。急性期で心臓に何も合併症を起こさない場合でもしばらくの病状管理が必要で、5年間ほどはフォローアップとして見守りを続けます。

また数は多くありませんが、学校での心臓検診にて見つかることの多い心臓の筋肉の病気である心筋症もあります。心臓の筋肉が厚くなったり、薄くなったりして心臓の機能が低下します。不整脈により突然死することもあり、見つかった場合には一生の管理が大切になります。

 

子どもの心臓病の検査、診断について

先天性心疾患では、赤ちゃんの検診にて呼吸症状や心雑音から発見されることがほとんどです。また、小さいときの検診で見過ごされた場合でも、学校に入学したときには学校心臓検診があり、小さいときの検診と学校心臓検診でほぼ先天性心疾患は発見されます。診断には心エコー検査が重要です。現代ではエコー検査の技術が発達し、重篤な先天性心疾患であればお母さんのお腹のなかにいる胎児のうちから診断が付くようになっているため、出生時からすぐに治療に移る体制を整えることが出来できます。

 

治療後の注意点について

心室中隔欠損症で、自然に穴が塞がったのであれば何も注意することはありません。手術を行った場合にも、術後に合併症さえ起きなければ日常生活に制限はなく、普通に暮らすことが出来ます。ファロー四徴症のお子さんに関しては、手術が成功すれば普通に暮らせるのですが、成人後に右の心臓の機能が悪くなることもあります。定期的な通院を欠かさず、決して自己判断で通院をやめないでください。後天性の病気である川崎病も急性期治療により心臓に後遺症がなければ、特に注意することはありません。冠動脈瘤などの心臓後遺症を残した場合でも、発症後2年間までは心筋梗塞などのトラブルが起きる可能性もありますが、その時期を乗り越えて必要な治療をしていれば8割以上は普通の生活を送ることが出来ます。薬を途中でやめてしまうことがトラブルに繋がるので、自分の判断でやめずにしっかりと服用を続けてください。

 

治療において気をつけている点

子どもの病気特集:子どもの心臓病 付属病院小児科 深澤隆治治療中のお子さんであっても、なるべく他の子どもたちと一緒に学校での社会生活を送れるようにしてあげたい、体育の授業も、出来る限りみんなと一緒に受けることが出来るようにしたいと考えています。そのコンディションを整えることが、私の仕事だと思っています。今は昔と比べて子どもが心臓病だからといって、絶望するようなことでは決してありません。心臓の手術の後に、プロのスポーツ選手になることはちょっと難しいかもしれません。しかし、適切な治療と管理により多くの方が、普通に学校に通い、部活をし、成人後は妊娠・出産をなさったりして豊かな生活を送っておられます。

 

子どもの心臓病に関する最新トピックスについて

新生児の治療に関しては、かなり重篤で以前は治療を行うことが出来ないような症状であっても、産婦人科、小児科、心臓外科とチームを組んで治療を行える環境が整ってきました。川崎病に関しても急性期治療のガイドラインが制定され、多くの病院で標準的治療が出来るようになってきています。日本においてもよりよい治療法を開発するために、多くの病院が参加する症例研究が行える状態が整ってきました。昔は子どもの心臓病に関する症例自体が個々の病院では少なく、より有効な治療法を開発することは難しかったのですが、全国で提携して取り組む流れになってきました。どこでも同じ治療を受けられる標準治療のガイドライン作成が今進められています。

 

保護者の方々に伝えたいこと

子どもの病気特集:子どもの心臓病 付属病院小児科 深澤隆治お子さんが心臓の病気と聞くとびっくりされると思いますが、今では治療法がある病気がほとんどです。まずは主治医の説明をしっかりと聞いて治療を始めましょう。そして、諦めず治療を継続していただければ、お子さんの将来は決して悲観するものではありません。やみくもに恐れるのではなく、私たち医師と一緒に病気に立ち向かっていきましょう。

 

(構成:ブランド推進室)

(この記事は2014年12月取材時点の情報です)

プロフィール

【 経歴 】
略歴:1985年日本医科大学卒業、同年日本医科大学付属第一病院小児科入局。1993年より東京女子医科大学心臓血圧研究所小児科へ国内留学後、1995年日本医科大学医員助手、1996年Harvard Medical School, Brigham and Women’s Hospital, Cardiology Division留学を経て2003年日本医科大学講師、2009年日本医科大学准教授。

専門分野:小児科学、小児循環器病学、川崎病

資格:日本小児科学会小児科専門医、日本小児循環器学会小児循環器専門医、日本循環器学会循環器専門医、日本周産期・新生児学会新生児蘇生インストラクター

公的役職:日本小児循環器学会学術委員会書記、日本循環器学会幹事、日本小児科学会地方会幹事、日本川崎病学会運営委員、日本小児心筋疾患学会監事

こちらの記事は「意気健康 12春号」の子どもの病気特集に掲載されたものです。