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学校法人日本医科大学

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子どもの病気特集  小児の膠原病と慢性疲労症候群

Webマガジン 家族のために知っておきたい医学知識、子どもの病気特集。小児の膠原病と慢性疲労症候群。

同じ病気でも、大人と子どもでは症状も原因も大きく異なることがあります。子どものほうが重症化しやすいケースも多く、注意が必要です。今回のwebマガジン特集では、前回の子どもの病気:総論に引き続き、日本医科大学の付属病院小児科部長の伊藤保彦(いとう・やすひこ)先生に、先生のご専門である小児の膠原病と慢性疲労症候群についてお話を伺いました。

小児科における膠原病と慢性疲労症候群

小児科の膠原病

小児にみられる膠原病一覧。川崎病、若年性突発性関節炎、リュウマチ熱、SLE(全身性エリテマトーデス)、小児皮膚筋炎、混合性結合組織病、ベーチェット病、シェーグレン症候群小児の膠原病では、血管炎が絡む「川崎病」と、大人のリウマチに相当し、以前は若年性関節リウマチと呼ばれていた「若年性特発性関節炎」の頻度が圧倒的に高くなります。溶連菌が原因で起こる「リウマチ熱」も以前は多かったのですが、抗生物質の使用によって近年は減少してきました。ただし、昨今は抗生物質を使わない方向に小児医療全体が向かっているため、ワクチンの無い溶連菌感染によるリウマチ熱は再び増加する可能性があります。

他には「SLE(全身性エリテマトーデス)」という病気があります。一般的には成人女性に起こる病気という認識がありますが、実際には妊娠可能年齢になると出現する病気であるため、初潮後であれば成人していなくても発症します。SLE患者さんに占める小児の割合は17%程度だといわれており、成人よりも重症化しやすいのが特徴です。
このように、小児科領域における膠原病としては「川崎病」「若年性特発性関節炎」「リウマチ熱」「SLE(全身性エリテマトーデス)」といった病気が多くみられます(図1)。

治療に関しては成人同様、生物学的製剤が開発されてから、ステロイド以外の選択肢が出てきたため、膠原病も治る病気と考えられるようになってきました。当院では治験なども積極的に実施して治療法の開発を進めています。

慢性疲労症候群とは?

近年、不定愁訴や強い疲労感のために不登校になってしまう子どもが増えています。そのような方のうち、「慢性疲労症候群」という状態になっている方が多くいます。慢性疲労症候群とは、原因不明の強度の疲労が長期間(通常6カ月以上)にわたって持続する状態の総称です。患者さんは強い疲労感だけではなく、頭痛や関節痛、筋肉痛なども発症し、場合によっては睡眠障害や精神障害などに進んでしまう方もいます。そのため日常生活に大きな支障が出てしまいます。

この病気は膠原病的な要素も強く、私の臨床研究の結果によると、不登校や慢性的不定愁訴を訴える子どもの4割で、膠原病でよくみられる「抗核抗体」が陽性であることが分かりました。
この臨床研究の発端は、私が1994年に、開院したばかりの日本医科大学千葉北総病院で診療を行っていた時でした。地域に新しい大学病院が出来たということで、当時慢性的な不定愁訴による不登校で悩まれていた患者さんが大勢、小児科にいらしたのです。そこで、以前に留学先で膠原病の研究を行っていたこともあり、臨床研究としてそのような患者さんの血液中にある自己抗体(抗核抗体)の検査を行うことにしました。

すると、実にそのような不登校の患者さんの4割から、抗核抗体が検出されたのです。つまり、不登校として一括りにされ、心の病と片づけられていた患者さんのうち、4割の方は、実際にはまだ病名が付いていない膠原病的な病気になっている可能性が証明されたのです。

そして種々の検討の結果、このような状態の方を、「自己免疫性疲労症候群(AIFS)」と呼び、新たな疾患概念として提唱することが出来ました。現在は自己免疫機序による疲労発生メカニズムを分子レベルで解明するために研究を続けています。

最後に

私が小児科医を目指した一番の理由は、「未来ある子どもの健康を守りたい」という想いからです。子どもの未来を守ることは、すなわち日本の未来、そして世界の未来を健全に作っていくことにつながります。そこに貢献出来ることは幸せなことだと思っています。
小児科医の多くは、それぞれに専門分野を持っています。しかし、小児科医であれば、自分の専門分野以外の疾患でも当然のように診療出来なければいけません。どんな病気であっても日本医科大学の小児科に来られた患者さんに対しては、「必ず助ける」という気持ちで取り組んでいます。

本学の小児科は非常に歴史が古く、近々100周年を迎えます。その歴史に恥じぬように、これからも地域のお子さんの健康を守るため、一丸となって日々の診療と研究活動を続けていきます。

(構成:ブランド推進室)

(この記事は2014年8月取材時点の情報です)

プロフィール

伊藤 保彦

【 経歴 】
略歴:1983年、日本医科大学卒業、同小児科学教室入局。

88年〜91年、米国オクラホマ医学研究財団に留学(自己抗体の研究)、94年日本医科大学付属千葉北総病院小児科医局長、98年、日本医科大学小児科学講師、助教授を経て、2012年、日本医科大学大学院医学研究科 小児・思春期医学教授(主任教授)、日本医科大学付属病院小児科部長、14年日本医科大学教務部長。

日本小児科学会専門医、日本リウマチ学会認定指導医、日本アレルギー学会専門医。日本リウマチ学会評議員、日本小児科学会代議員、日本小児リウマチ学会会長(運営委員長)、日本疲労学会評議員、日本未病システム学会評議員、日本シェーグレン症候群学会理事、開成学園校医。

小児膠原病学・臨床免疫学専門。

こちらの記事は「意気健康 10秋号」の子どもの病気特集に掲載されたものです。