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子どもの病気特集  小児白血病

Webマガジン 家族のために知っておきたい医学知識、子どもの病気特集・小児白血病 植田高弘

白血病は大人もかかる病気ですが、子どもの場合には発症する原因や治療法、また治療後の状態や注意点が大人とは異なります。効果的に治療を行うためには早い段階で病気に気付き、どのタイプの白血病であるかを見極めた上で治療を開始することが重要です。そこで今回は日本医科大学付属病院小児科の植田高弘(うえだ・たかひろ)先生にお話を伺いました。

小児白血病とは?

白血病は血液のがんといわれ、血液細胞が作られる過程でがん化し白血病細胞となり、増殖していく病気です。
正常な造血細胞はごく初期にリンパ系と骨髄系に分かれ成熟します。これらの細胞のうちがん化した細胞の種類によって、「骨髄性白血病」「リンパ性白血病」に分けられます。骨髄が白血病細胞で満たされ、正常に血液を作ることが出来なくなるため、貧血症状が起こりやすくなります(図1)。
 

子どもの病気特集・小児白血病 図1、図2

 

15歳以下の小児が発症する白血病を「小児白血病」と呼びますが、大人の白血病とは異なる部分が多くあります。子どもがかかるがんのうち小児白血病がもっとも多く、40%を占めます。日本では年間約700~800例ほど確認され、大人に多い大腸がんや肺がんは、子どもではほとんどみられません。また、小児白血病の場合には急性白血病が主であり、慢性白血病は5%以下となります(図2)。

急性白血病のうち70~75%がリンパ性白血病で、成人に比べはるかに治療後の状態が良いことも特徴です。化学療法の進歩や造血幹細胞移植の導入により、リンパ性白血病で80%以上、急性骨髄性白血病でも70%以上の長期生存率が得られています。

 

小児白血病の原因について

大きな原因となりうるのは高用量の放射線にさらされることや、ベンゼンなどの有機溶剤を吸い込むことなどがありますが、子どもの場合にはそれらの環境下に置かれることはまれであり、発症の明確な原因はよくわかっていません。一方、最近では遺伝子の異常を網羅的に調べることが出来るようになり、急性の白血病はほとんどの症例で何らかの遺伝子異常があることが解明されています。

 

小児白血病の初期症状・初発年齢

子どもの病気特集・小児白血病 植田高弘小児白血病の初期症状として、リンパ節の腫れ、赤血球の減少による貧血、血小板の減少による紫斑(あざ)などがみられます。自分の言葉で体の不調をうまく表せない年代の子どもであるため、熱がなかなか下がらず風邪だと思って受診させたところ、急性の白血病であったというケースも多くあります。
実際にあった例では、「普段は遊園地に行くと喜んで、いつも両親を引っ張って歩くような子なのに、その日だけは着いてすぐに座り込んでしまった。どこか体調が悪いのではないか」と病院に連れられてきたところ、白血病からくる貧血が原因であることが分かりました。その他にも元気がなくぐったりしている、あざがたくさん出来る、鼻血が20~30分も止まらないというような症状もあります。ご両親が「何かがおかしい」と気付いてあげることが早期発見において非常に重要です。

 

小児白血病の治療とその副作用について

小児白血病の治療は、抗がん剤による化学療法が第一の選択となります。子どもの場合は治療後に生存していくべき年月が長いため、副作用や晩期合併症を避ける目的で造血幹細胞移植はなるべく行いませんが、再発や難治性の場合には移植も選択肢となります。代表的な抗がん剤には、ステロイド剤、ピンクリスチン、アントラサイクリン、l-アスパラキナーゼなどがあります。治療開始時にプレドニゾロンというステロイド系抗炎症薬を投与することが多いのですが、この薬に対し反応が良い場合は寛解率も高くなるといわれています。小児白血病は年間で700~800例と発症数自体が少ないこともあり、治療を行う医療機関で全国統一の治療法を用いています。どこに行っても同じ治療が受けられるようにするため、全ての治療が臨床試験となります。この治療法は、日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)により絶えず見直しがされ、常に最新の治療を受けることが出来るようになっています。また、出来る限り副作用・合併症を避け治療を行うために、細かくガイドラインが分けられ、治りやすい方には副作用の少ない、弱い治療が行われるよう定められています。

抗がん剤は白血病細胞だけではなく、正常な細胞にもダメージを与えてしまうため、患者さんは強い副作用に苦しめられることもあります。主な症状としては、白血球、赤血球、血小板の減少、口内炎、下痢、腎・肝機能の低下などが挙げられます。また、脱毛は心情的な影響が大きいので、メンタルケアが重要になります。

 

治療中の生活について

子どもの病気特集・小児白血病 図3白血病の治療中は免疫力が下がっているので、感染症から身を守ることが必要となります。

また、急性リンパ性白血病の治療に使われる抗がん剤の大部分は、脳や脊髄にあまり入っていきません。そのために中枢神経にがんが再発することが多いので、点滴で抗がん剤を投与することに加え、腰椎穿刺(脊髄穿刺)を行い髄液に抗がん剤を投与する化学療法を行います。状況により、脳への放射線治療が行われることもあります。

治療にかかる期間は、入院期間が1年間、その後の維持療法のため通院する期間が1年ほどとなります。退院時には体内の白血病細胞数は数値的に寛解と呼ばれる状態まで下がりますが、退院後の維持療法を続けて初めて白血病細胞がゼロになることが分かっています(図3)。1年間という期間についても、世界的な治療と臨床試験の結果で再発を防ぐのに最適な長さであるという結果から設定されています。

 

治療後の注意点について

治療後も免疫力が落ちている状態が続くので、感染症の予防が大切になります。本人だけではなく、ご家族も手洗いとうがいをしっかりとしてください。十分に気をつけていても、通常の状態であれば感染を起こさない、日常環境や自身の体内にいる弱毒菌によって感染が起こることも多くあります。その場合には、すぐに強い抗生物質を処方し対処します。

感染症で特に気をつけてほしいのは、みずぼうそう(水痘)とはしかへの感染です。これらは小児白血病を患っている場合、重症化することが知られています。そのため、みずぼうそうが流行りだしたら幼稚園を休んでもらうなどの対処を行います。また、みずぼうそうにかかっている友達に接触したことが分かった段階ですぐに病院にお越しいただき、投薬での治療を行います。

白血病は寛解後、無事に5年間を過ごせれば再発はほとんどないといわれています。現代では「小児白血病は治るがん」だと認識が変わってきています。小児白血病と伝えられるとご両親はとてもショックを受けられますが、今では10人に8人以上が治る病気になりました。子どもは寛解後も、天寿を全うするまで長い未来があります。その期間をより良く生きていただくために、寛解した患者さんが大人になってからの健康に関するデータを集めることが、急ぎ行われています。年を経るにつれて、肝機能障害・腎機能障害が起きやすくなる傾向にあるとの調査結果も出ていますので、小児白血病経験者は日常生活に復帰した後もこまめに健康診断を受けることが重要です。

 

診療において気をつけていること

子どもの病気特集・小児白血病 植田高弘治療に関しては、合併症の発症が起きないよう常に気を付けています。その他には基本として決められた治療手順をきっちり履行することです。
患者さんへの接し方に関しては、小児科という本人だけの治療で終わらない成人医療とは違う環境ですので、ご両親やときにはお祖父さんお祖母さんも含めた人間関係を大切にしています。最初から小児専門の心理士、児童専門心理学の先生に治療チームに加わってもらい、患者さん本人を含めた家族のメンタルケアを行っています。入院の間はお母さんも24時間個室にいることになるので、お母さんへのカウンセリングを特に大切にしています。

 

小児白血病に関する最新トピックス

これまでの治療は、古典的治療として抗がん剤を使って、いい細胞も悪い細胞もやっつけるというものでした。最近出てきたイマチニブという分子標的薬はがん細胞だけを狙い撃ちするもので、慢性白血病でも大変効き目がある薬です。「フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病」という絶対予後不良といわれ難治性の白血病だったものが、これまでの化学療法に加えてこの飲み薬を飲むだけで7割以上の方が寛解するという臨床結果が出ています。これまでは移植しても半分以上の方が助からなかったにもかかわらず、飲み薬を追加するだけで7割以上の方が助かっているのです。血液の分野は他のがんに比べて研究が進んでいるので、日進月歩で新しい薬が開発されています。

 

白血病のお子さんを持つ保護者の方に伝えたいこと

小児白血病は治る病気になってきています。治療中は大変ですが、退院後も通院と継続した健康チェックを続けていただきたいと思います。私たち医師も全力でサポートしていきます。
お子さんにずっと元気で過ごしてもらうためにも、大人になる過程で治療の後遺症が出る可能性があることを知っていただき、早めの健康診断や日常の健康状態の把握を心掛けてください。お悩みや疑問などがありましたら、ささいなことでも気軽に主治医に相談してください。

(構成:ブランド推進室)

(この記事は2014年12月取材時点の情報です)

プロフィール

【 経歴 】
略歴:1989年日本医科大学卒業、同大学小児科学教室入局。1996年同大学院修了後、東京大学医科学研究所癌病態研究部・小児科、1999年日本医科大学付属病院小児科医員助手、2001年米国国立衛生研究所(NIH)・NIDDKへ留学。2004年より独立行政法人静岡医療センター小児科を経て、2006年日本医科大学小児科講師。

専門分野:小児血液・腫瘍

資格:日本小児科学会専門医、日本血液学会専門医・指導医、日本小児血液・がん学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医

所属委員:日本小児血液がん学会 評議員、日本小児科学会東京地方会代議員

 

こちらの記事は「意気健康 12春号」の子どもの病気特集に掲載されたものです。