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子どもの病気特集  発疹

Webマガジン 家族のために知っておきたい医学知識、子どもの病気特集・発疹 楢﨑秀彦

一口に発疹と言っても、種類も原因もさまざまです。急に発疹が起きることもあれば、徐々に現れる場合もあります。なかには、緊急性が高い病気に伴って出現する発疹もあり、そのような場合は注意が必要です。そこで、今回は、子どもの発疹について、日本医科大学千葉北総病院小児科の楢﨑秀彦(ならざき・ひでひこ)先生にお話を伺いました。

発疹とは?

医学的には皮膚にあらわれる病変を総称して「発疹」と呼びます。発疹は一般的には色調、大きさ、隆起の有無などによって分類します。

色調では、発疹は4つに分類され、それぞれ「紅斑」、「紫斑」、「色素斑」、「白班」に分けられます(図1)。紅斑とは、毛細血管が拡張したために生じる発疹です。そのため皮膚の上から力を加えて圧迫すると発疹は見えなくなります(図2)。一方、紫斑は血管から血液が漏れたために生じるので、圧迫しても消えません。色素斑はメラニンと呼ばれる色素の沈着によって生じる発疹で、沈着部位が深いと蒙古斑のように青くなり、逆に沈着部位が浅いとほくろやそばかすのように黒から茶褐色に見えます。白班は色素斑の反対で、メラニン色素が減少する結果生じます。

小山のように盛り上がった隆起性の病変の場合、直径が10mm以下のものを「丘疹」、10~20mmを「結節」、そして30mm以上を「腫瘤」とよびます(図3)。また、蕁麻疹でみられるように、むくみによって皮膚が局所的に扁平に盛り上がっている状態を「膨疹」とよびます。

さらに、内容物によっても呼び方が変わり、内容が透明なものは「水疱」といい、白色から黄色の場合は「膿疱」といいます。膿疱は、炎症によって白血球が集合することで生じます。

子どもの病気特集・発疹 図1・図2・図3

 

発疹の原因

発疹の原因はさまざまです。先天的要因としては、皮膚が本来持っている外界に対するバリア機能に異常がある場合があります。また、後天的要因としては、アレルギーや感染症に伴い皮膚で免疫反応が起きることで生じる発疹があります。皮膚という組織には免疫細胞が多く存在しているため、アレルギーや感染など、何かしらのきっかけから免疫反応がおきて、その結果として発疹が現れるのです。

年齢別に発疹の原因をみていくと、生後間もない時期では外界と初めて接することで「新生児中毒疹」と呼ばれる発疹がみられることがあります。また新生児(生後1カ月)から乳児(生後1年)の間には、他にも「乳児湿疹」「脂漏性湿疹」「汗疹」と呼ばれる発疹が出やすくなります。

おむつをしている時期の子どもでは、おむつの刺激によって生じる「おむつ皮膚炎」や、おむつの中でカンジダ菌が繁殖する結果、皮膚に炎症が起きる「カンジダ皮膚炎」がみられることもあります。そして、早ければ生後3カ月頃から「アトピー性皮膚炎」も考えられるようになります。典型的なアトピー性皮膚炎では、耳たぶや手首、足首、肘、膝に、左右対称性の病変がみられます。

子どもの病気特集・発疹 図4:発疹を伴う感染症の例アレルギー反応に伴う発疹としては、食物や虫さされなどによる蕁麻疹が一般的です。多くの場合は慌てる必要はありませんが、アナフィラキシーショックといって、命に関わる状態になることもあるので、蕁麻疹が出たら経過をしっかりと観察することが必要です。

アレルギーとともに発疹の原因として多いのが感染症です。図4にあるように、子ども時代には年齢とともにさまざまな感染症にかかります。

生後6カ月〜2歳頃までには、「突発性発疹」というヘルペスウイルス(HHV6, HHV7)による感染症にかかることがあります。通常、3、4日の発熱のあと、熱が下がると同時に全身に発疹が現れます。全身状態は良好で発疹も数日で消えますので、あらかじめ知っていれば必要以上に慌てずに対処出来ます。

幼児期になると、保育園や幼稚園などに行くことで、外界との接触が増えます。その結果、とびひ(伝染性膿痂疹)、みずいぼ(伝染性軟属腫)、みずぼうそう(水痘)、手足口病、溶連菌感染症などの感染症に伴う発疹がみられるようになります。また、思春期にかけては、リンゴ病(伝染性紅斑)や伝染性単核症などのウイルス感染に伴う発疹もみられます。他にも、自己免疫疾患といわれる川崎病、アレルギー性紫斑病、SLE(全身性エリテマトーデス)などに伴い発疹が現れることもありますので、しっかりと診断することが重要になります。ちなみに水痘の予防接種は2014年10月から、予防接種法が改訂されて定期接種になり2回接種が基本となりました。今後は接種率の向上によって水痘が減少することが期待されます。

近年は抗菌薬の適正使用が全国的に推奨されています。抗菌薬は細菌には効果がありますが、ウイルスには効果がありません。そのため、ウイルス性の風邪等では抗菌薬を処方しないことが推奨されています。それ自体は正しいことですが、一方で抗菌薬が必要なケースにも使用されないケースが増えており、その結果、溶連菌感染症を原因とする「リウマチ熱」が増加する懸念があります。

 

緊急性の高い発疹について

千葉北総病院 楢﨑秀彦発疹の中には、緊急性の高い病気と関係しているものもあります。たとえば、食事や薬剤等によって過剰なアレルギー反応が起きるアナフィラキシーという状態では発疹がみられることがあります。また、敗血症という、細菌が血液の中で増殖してしまう病気では、細菌の細胞壁成分や毒素が原因となって発疹が出ることがあります。症状として意識がもうろうとして呼びかけに反応しなくなったり、顔色が悪く大量の冷や汗や呼吸困難がみられたりする場合があり、直ちに救急処置が必要になります。一方、アナフィラキシーや敗血症と比べると緊急性はやや落ちますが、血小板が減少することによって生じる紫斑なども注意が必要です。

 

発疹の検査、診断について

発疹から病気を診断するにあたっては、問診と診察がとても重要です。患者さんの年齢、性別、発疹の部位、形態、色、そして発疹が起きた経過などから、原因となる病気を推定します。検査に関しては、患者さんの状態や推定される病気によって必要な検査を実施します。子どもの患者さんには、恐怖心を植え付けてしまうと今後の診療にも影響するので、痛みを伴うような検査は出来るだけ必要最低限に留めるように心掛けています。具体的な検査方法としては、血液検査、尿検査、細菌培養検査などがありますが、場合によっては皮膚科や形成外科に依頼をして「皮膚生検」などを行うこともあります。

治療法について

発疹の原因によって治療法は異なります。感染症に伴う発疹の場合は、抗菌薬などによって発疹の原因となっている病気を治療することで改善します。一方、食物アレルギー等によるアトピー性皮膚炎等では、スキンケアをはじめとして、薬による治療、栄養指導など小児科だけではなく皮膚科や栄養士との連携のうえ、治療を行うことが重要になります。

 

治療後や予防における注意点

ウイルス感染症の場合は、集団生活の中で容易に感染が拡大してしまいます。そのため、基本的には学校感染症法に基づいて適宜判断します。特に幼い子どもの場合は集団生活のなかでワクチン未接種のお子さんも多くなるため、集団感染を未然に防ぐためにもご家族の協力を得ながら出席停止期間などについて判断していきます。

食物アレルギーの場合は、患者さんやそのご家族の食生活の管理がとても重要になります。そのため、専門の栄養士による指導の下、食事内容の低アレルゲン化や代替食品による管理を行います。子どもにとって、食事は日常生活において楽しみの一つでもあるので、QOL(生活の質)を下げてしまうようなアレルゲン除去食の実施は最低限に留めるようにしています。

診療において気をつけていること

子どもの病気特集:発疹 千葉北総病院楢﨑秀彦先生子どもからみると、医療関係者は日常的に接しているわけではなく、また予防接種の影響等から「怖い」というイメージを持たれがちです。そのため、診察では安心感を与えるためにも、最初はなるべく恐怖感を与えないように話しかけるようにしています。

小児科診療では患者である子どもと保護者の方の協力が必要不可欠です。幼い子どもの場合は自分で症状や経過を訴えることが上手に出来ないため、特に家庭における家族による観察も重要です。お互いの信頼関係がないと良い治療が行えません。そのため、患者さんと保護者の方とはできるだけ丁寧にコミュニケーションを取り、良好な関係を保つように心がけています。

子育てはとても大変なことです。保護者の方々は日常的に色々と思い悩むことも多いと思います。小児科は病気だけではなく、子どもの成長を見守る科でもあります。家庭での子どもに関する悩み事があれば、遠慮せずに小児科にご相談いただけたらと思います。

 

(構成:ブランド推進室)

(この記事は2014年10月取材時点の情報です)

プロフィール

【 経歴 】
略歴:1997年日本医科大学医学部卒業、同小児科学入局。1999年鹿島白十字総合病院小児科派遣。同年日本医科大学大学院(生体防御医学)医学博士号取得。2003年国立東静病院小児科派遣(現 独立行政法人静岡医療センター)、04年日本医科大学多摩永山病院小児科助手、05年日本医科大学付属病院小児科助手を経て、同年米国メリーランド州Johns Hopkins Medical Institute,Department of Oncology; Postdoctoral Fellowへ留学。09年日本医科大学多摩永山病院小児科助教、同年日本医科大学千葉北総病院小児科助教、翌10年より日本医科大学千葉北総病院小児科病院講師。12年同病院、病院感染対策委員、12年より現在、日本医科大学千葉北総病院小児科医局長、13年より現在、日本医科大学千葉北総病院 病院感染対策委員会 副委員長。同病院小児科講師、14年より現在、日本医科大学千葉北総病院感染制御部副部長 

専門分野:免疫膠原病・感染症・腫瘍免疫 

資格:日本小児科学会専門医・指導医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、インフェクションコントロールドクター 

所属学会:日本小児科学会・アメリカ小児科学会・日本感染症学会・日本リウマチ学会・日本小児リウマチ学会・日本化学療法学会 

所属委員:(千葉北総病院)病院感染対策委員・エイズ結核対策委員・医療材料委員・薬事委員・医薬品安全管理委員・医療連携支援センター委員・臨床検査委員・放射線センター委員・放射線管理安全委員・医療情報管理委員・ホームページ委員・虐待防止委員

 

こちらの記事は「意気健康 12号」の子どもの病気特集に掲載されたものです。