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子どもの病気特集  腹痛

Webマガジン 家族のために知っておきたい医学知識、子どもの病気特集。腹痛 柳原剛

腹痛は子どもの症状としてとても多く見られますが、その原因はさまざまです。保護者としては「おなかが痛い」とお子さんに言われると、つい最悪の病気を考えてしまいますが、腹痛がどのような原因によって起きるかを知り、その頻度などを前もって認識しておくことで必要以上の心配をせずにすみます。ここでは、子どもの症状として多い「腹痛」について、日本医科大学武蔵小杉病院小児科の柳原剛(やなぎはら・たけし)先生にお話を伺いました。

腹痛の種類

図1:腹痛の種類腹痛とは腹部の痛みを指しますが、発生部位などからいくつかのタイプに分けられます。一つは、臓器など内蔵そのものの痛みである「内蔵痛」があります。また臓器の外側、たとえば腹膜や腸間膜など、臓器の表面から生じる「体性痛」や、痛みの原因とは別の場所で痛みを感じる「関連痛」などがあります(図1)。 また、身体的な痛み以外にも、精神的な理由から腹痛を感じることもあります。

腹痛の原因

腹痛の原因として子どもに一番多くみられるのは、どの年齢層においても「便秘」になります。便秘は腹痛の30〜40%を占めるといわれています。また、ウイルスなどによる「急性胃腸炎」も腹痛の原因として多く、20%程度を占めています。すなわち、便秘と胃腸炎で子どもの腹痛の原因の過半数を占めています。一方、急性虫垂炎や腸重責といった緊急性の高い病気は、実際の頻度としてはそれほど高くなく、割合としては10%にも届きません(図2)。

図2:子どもの腹痛の原因「便秘」が起きる理由は多岐にわたります。たとえば、食事に関して好き嫌いが多く水分の摂取が不足するなど食生活のバランスが悪いことも原因となります。一方で生まれつきに便が出にくい子どももいますし、先天的な病気でも便秘になることがあります。日常診療ではこのような重篤な病気を見逃さないことが重要になります。

腹痛の原因を年齢別に見ると、乳児など小さい子の場合は先天的な病気も考慮する必要があります。腸重責など乳幼児に多くみられる疾患の他、たとえば「中腸回転異常症」や「ヒルシュスプルング病」、「胆道系の病気」など外科的処置が必要な病気が相対的に多くなるのが小さい子どもの特徴です。年長者になってくると、虫垂炎が多くなると同時に精神的な病気も多くみられるようになります。近年、子どものストレス性胃炎や十二指腸潰瘍などが指摘されるようになっており、当院でも年間に数人は、心窩部の持続的な強い痛みによって、大人と同様の内視鏡検査を行うことがあります。

腹痛では重篤な病気を見逃さないよう、しっかりと診断することが重要です。腸重積症や鼠径ヘルニアの嵌頓(かんとん)などは緊急性があり見逃せない病気です。腹痛に対しては、安易な対症療法を行うのではなく、原因をきちんと突き止めて治療することが大事です。

 

子どもの腹痛の診察方法

大人と違い、子どもは自分の症状を上手に伝えられません。年長者であれば、「お腹が痛い」と伝えられますが、乳児(1歳以下)では当然無理です。そのため、乳児が不機嫌そうに大声で泣いていたら、その原因として腹痛を考える必要があります。反対に「お腹が痛い」と伝えられる年齢になっても、必ずしも腹部に原因があるとは限りません。風邪が原因で腹痛を訴える場合もありますし、なかには口では「痛い!痛い!」といいながら、触診すると平気な様子で笑い出す子もいます。

患者さん本人が訴える症状をどこまで当てにして良いかということに関しては、教科書的には5歳から本人の言葉に信憑性を持てると言われています。そのため、あくまで目安ですが5歳未満のお子さんでは、保護者の方のお話を参考にして診察をすることになります。

おもちゃイメージまた、子どもの診察では、泣いているとそれだけでお腹を触ることが難しくなります。そのため、なるべく興奮させずに話をすることが重要で、アニメのDVDを見せたり、おもちゃで遊ばせたりしながら診察を行います。患者さんが必ずしも診察に協力的ではないのが、成人の診察と大きく異なる点です。

先述したように、子どもでは年齢毎に頻度の高い病気があるので、腹痛の診断では年齢を考慮に入れて鑑別診断を行っています。同時に、痛みの起こり方、すなわち「急性」の症状なのか、それとも一定の期間をおいて繰り返し起きる「慢性」の症状なのかを判断しています。

小さい子どもの場合は、緊急性のある重篤な病気では文字通りぐったりとして動かなくなることがあります。一方、年長者では強い腹痛を訴えていても実は「心因性」の腹痛であり緊急性が無いこともあります。このように、いろいろな状況や随伴症状(吐き気、下痢、血便等)を考慮に入れて、同時に血圧や脈拍、体温等のいわゆるバイタルサインにも気をつけながら、緊急性の有無を判断します。

いずれにしても、患者さん本人の訴えを丁寧に取り上げながら、頭ごなしに否定せずに、腹痛の原因が明確な病気によるものであっても心因性であっても、症状の裏にある理由を探すことが大事です。
 

腹痛の検査

腹痛の一般的な検査方法としては、血液検査を始め、レントゲン検査、超音波検査、そしてCT検査などがあります。レントゲン検査は手軽に実施出来ますが、分かりやすい所見がでないこともあります。また、超音波検査は放射線被爆も無く簡便ですが、実施者の技能に左右されるという欠点があります。CT検査は、放射線被爆はありますがとても有効な検査です。武蔵小杉病院小児科では小児外科と連携し、手術が必要な腹痛疾患が疑われる場合には積極的にCT検査を行い、的確な診断をつけるように努めています。

腹痛の治療

腹痛の原因として最も多い便秘の場合は、まず「浣腸」を行います(図3)。浣腸は治療としても行われますが、同時に便の性状を確認出来るため、検査としても用いられます。

治療と同時に、保護者の方とは、「なぜ便秘になったのか?」についてお話をします。普段の食事や生活スタイル、排便習慣などについて詳しく問診し、必要に応じて日常生活の指導を行います。一方、便秘の次に頻度の高い胃腸炎が疑われた場合は、まずは整腸剤で経過を見るのが一般的です。下痢止めは初めから使用しない方が無難でしょう。

虫垂炎など外科的な手術が必要な病気が疑われた場合は小児外科に連絡します。虫垂炎の場合、最近はまず抗生物質で状態を軽くし、その後に内視鏡手術によって虫垂の摘出手術をする方法が主流となっています。

 

 

図3:浣腸の使い方(図解)

図4:腸重積の模式図

また、乳幼児に多くみられる腸重責は、腸と腸が重なりあってしまい治療をしないと腸が壊死を起こしてしまう怖い病気ですが(図4)、その治療としては、まず高圧浣腸を行います。圧をかけながら整復し、それで戻らない場合は外科的な処置が必要になります。

このように、腹痛の治療は原因によって異なりますが、治療において特に気をつけていることは、「安易な対症療法は行わない」ということです。成人の腹痛治療で痛み止めとして比較的多く使用される胃腸の動きを止める薬剤等は、便秘の子どもには逆効果になってしまうため、使用しません。まずは原疾患をしっかりと診断し、それにあった治療法を選択していくことが大事だと考えています。

 

自宅で出来る子どもの腹痛対策

食事イメージもし子どもが2〜3日ほど排便が無く腹痛を訴える場合、ご自宅で市販の浣腸を使って便を出してみてください。そこで腹痛が治まれば、一安心出来ます。仮に便が出た後も腹痛が続く場合は、大きな病気が隠れている可能性もありますので、医療機関を受診してください。先述したように、医療機関では治療的検査としてまず浣腸を行うことが一般的ですので、自宅で浣腸しても問題はありません。

便秘が原因で繰り返し腹痛を訴える場合、何度も浣腸することは好ましくないので、適切な排便習慣を作ることが大事になります。主治医と普段からよく相談しましょう。
 

日常診察で心掛けていること

子どもの病気特集:腹痛 武蔵小杉病院柳原剛先生子どもは自らの意志を上手に伝えられません。そのため、医療者側が積極的に患者さんを注意深く観察しなければ、大きな病気を見逃してしまう可能性があります。そのことは私自身、常に気をつけて診療を行っています。武蔵小杉病院では平成22年度から「周産期・小児医療センター」が整備され、小児科、産科、新生児科、小児外科が一丸となった診療科横断的な医療体制を構築しています。

この万全の医療体制のもと、今後も子どもたちの健康を守り続けていきたいと考えています。

 

(構成:ブランド推進室)

プロフィール

【 経歴 】
略歴:1996年日本医科大学卒業、同小児科入局。2004年日本医科大学大学院生体防御医学卒業、05年米国アラバマ大学バーミングハム校へ留学。07年帰国後、日本医科大学武蔵小杉病院小児科勤務。

専門分野:小児腎臓病学、免疫学

資格:日本小児科学会専門医、日本腎臓学会腎臓専門医。 日本腎臓学会代議員、日本女子大学家政学部食物学科非常勤講師。

公的役職:日本小児循環器学会学術委員会書記、日本循環器学会幹事、日本小児科学会地方会幹事、日本川崎病学会運営委員、日本小児心筋疾患学会監事

 

こちらの記事は「意気健康 11号」の子どもの病気特集に掲載されたものです。