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生活習慣病特集  痛風

Webマガジン 『生活習慣病特集』part.9 痛風 日本医科大学付属病院リウマチ科部長 中村 洋

夏の暑い夜にビールを何杯も飲んだ翌朝、突然、足首や足の親指が痛くなったことはありませんか?足を捻った覚えもないのに、立ち上がることも出来ないほどの強烈な痛み。これが「痛風発作」です。痛風は高尿酸血症をきっかけに発症し、放置すると他の生活習慣病である高血圧や脂質異常症なども合併しやすくなります。かつては「贅沢病」といわれた痛風とその原因となる高尿酸血症について、今回、日本医科大学付属病院リウマチ科部長の中村洋(なかむら・ひろし)先生にお話をうかがいました。

痛風発作のしくみ

図1:尿酸結晶痛風は、代謝によって生じた「尿酸」が血液中で異常に高くなる「高尿酸血症」がベースとなり起きる病気です。血液の尿酸値は男性の場合7.0mg/dl以下が正常範囲とされていますが、さまざまな原因で血液中の濃度が高くなりすぎると、針状の尿酸結晶として関節内に出てきてしまうのです(図1)。
関節内に出てきた結晶は「好中球」と呼ばれる細胞に貪食(どんしょく)されます。そして、尿酸結晶を貪食した好中球は活性化し、プロスタグランジン、ロイコトリエン、サイトカインなどの炎症性のタンパク質や活性酸素が多量に分泌されます。これらのタンパク質の作用は強力で、著明な腫れや激しい痛みを引き起こします。これが痛風発作という現象です(図2)。

図2 痛風発作の仕組み

高尿酸血症と痛風との関係

痛風発作は高尿酸血症をベースに起こりますが、すべての高尿酸血症の人に痛風発作が起きるのではなく、発作をおこす方は1割から2割です。

図3 高尿酸血症の主な合併症一方、痛風発作のない8割の人も安心はできません。高尿酸血症の状態が続くと、将来、大きな健康上の問題が起きるのです。たとえば、尿管に尿酸結晶が蓄積することで「尿路結石」が生じ、場合によっては非常に強い痛みを伴います。また最近の研究では、高尿酸血症を放置しておくと、「慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)」が起こる危険性が高いことが分かってきました。CKDは腎不全に進行し、透析にいたることもある病態です。他にも、高尿酸血症と高血圧や脂質異常症との間には深い関連性がある事が分かっています(図3)。
そのため、たとえ痛風発作をおこしていなくても、高尿酸血症はしっかりと治療していく必要があるのです。

高尿酸血症のタイプ

高尿酸血症の原因には大きく二つの要因があります。一つは体内の尿酸を十分に体外に排出できないタイプで、6割の方がこれに当てはまります。また、体内で尿酸を過剰に作ってしまうタイプの方もいます。このタイプに該当するのは1割程度となります。そして残りの3割程度はこれらの混合型になります。先天的代謝異常で尿酸の産生が高い方もいます。

高尿酸血症と痛風の疫学

2006年に発表された大規模な国内の疫学研究によると、血液中の尿酸値は男女共に上昇傾向にあります。そして尿酸値の平均値では男性の方が女性よりも1.5g/ml高いことが分かっています1)。性ホルモンなどの影響により、もともと、男性の方が女性よりも高尿酸血症になりやすい傾向があるのです。痛風発作の9割以上が男性で、男女差が極めて大きな疾患であると言えます。
さらに、高尿酸血症の若年化が進んでいます。昔は50代の男性が多かったのですが、最近は30代から指摘される方が増えています。30代以上の男性の約30%の方が高尿酸血症と診断されています1)。発症年齢の若年化は、高尿酸血症に限らず、脂質異常症などの他の生活習慣病でも進んでいる現象であり、注意が必要です。
最近のトピックスとして、日本の研究グループが、痛風を発症しやすくする遺伝子多型を発見したことがあげられます。ABCG2という尿酸輸送体の遺伝子に変異があると、尿酸の排泄機能が低下し、痛風を早期に発症することが分かってきました2)

痛風発作の症状について

図4 痛風発作の場所痛風発作の痛みは耐え難い激痛として知られ、これが安静時にも続きます。関節の中から生じる強い痛みのため、ひたすら横になって痛みに耐え、発作が収まるのを待つことになります。また、発熱などの全身症状も伴います。通常、痛みのピークは24 時間程度で、その後、徐々に改善し、1〜2週間程度で炎症が沈静化するといわれています。
痛風の「風」という漢字は、昔の言葉で「病気」を意味します。つまり、痛風は文字通り『痛み』を特徴とする病気なのです。当院の外来においても、痛風発作で受診される患者さんには、自力では立ち上がることさえ出来ず、家族に抱きかかえられながら来院される方が多くいます。また、足の痛みだけでなく、高熱が出て倦怠感も強く、非常に重篤そうにみえる状態であることも多いのです。
痛風発作の9割は足の親指の付け根に起こります。そのほか、足関節や膝などにも出現することがあります(図4)。発作がなぜ足の親指付け根に出現するかについては、他の部位と比べて体温が低く血流が悪いため、結晶が出てきやすいためと考えられています。

図5 痛風結節発作部位には炎症がおきているため、高度の熱感があり、赤く変色します。最近は少なくなってきましたが、「痛風結節」と呼ばれる皮下結節が見られることもあります(図5)。

痛風発作の誘因

痛風発作は、血液の尿酸値が高いだけでなく、アルコール、肉類、ソフトドリンク、果糖の摂取によって起こりやすくなるといわれています。また、脱水や運動も誘因となります。アルコール類では、特にビールは他のアルコール(スピリッツやワイン)と比べても飲酒後の発作の発症リスクが大きいといわれてます3)
しかし、実際に患者さんに話を聞いてみると、その人によって発作を誘発するアルコールの種類が異なる場合があります。「自分はビールの飲むと発作が来る」「私は日本酒で起きる」など、それぞれの患者さんで発作を誘発するアルコールの種類が異なることは興味深いと思います。他にも、疲れやストレスなども痛風発作の原因となることが指摘されています。

痛風発作の検査と診断について

急性の関節炎で来院された場合、痛風発作のほかに他の関節炎、感染症、外傷を鑑別しなければなりません。具体的には、関節リウマチなどのリウマチ性疾患、化膿性関節炎や蜂窩織炎、そして捻挫や骨折です。そのために血液検査やレントゲン撮影を行いますが、発作時の血中尿酸値は、かならずしも高い訳ではなく、正常な場合もあります。関節液内の尿酸結晶が証明できれば診断が確定します。

痛風発作の治療法について

現在、痛風発作時の薬物治療は、まず「非ステロイド系の消炎鎮痛剤(NSAIDs)」を用います。
また、発作の前兆がある場合は、「コルヒチン」という薬を前もって服用することも有効です。
コルヒチンは、好中球の活性を抑制する効果があり、関節にムズムズとした違和感を感じ、発作が予想されるような状況で使用することにより、発作が予防できます。
一方、痛風発作が発生した場合、尿酸値が変動すると悪化させる可能性があるため、尿酸降下薬は使用しません。炎症がおさまってきてから使用することになります。

痛風発作の予防(高尿酸血症の治療)

図6 高尿酸血症の治療法痛風発作を予防するためには、高尿酸血症の治療が必要となり、薬物療法を行います。従来用いられている薬としては、尿酸の排泄を促進する「ベンズブロマロン(商品名:ユリノーム)」や、尿酸の産生を抑制する「アロプリノール(商品名:ザイロリック)」があります。また、腎機能低下患者にも常用量を使用できる、日本発の「フェブキソスタット(商品名:フェブリク)」という、尿酸の産生を抑制する新規薬剤が開発され、副作用の少ない薬として2011年より用いられています(図6)。
これらの薬で尿酸値はコントロールされますが、多くの方では、薬物治療は長期間続ける必要があります。
高尿酸血症の管理には、食事療法も重要です。鶏、豚、牛のレバーや魚の肝、赤身の魚に多く含まれていますので、これらの食事は極力避け、野菜を多く食べるようにします。
また、アルコールは代謝時に尿酸が増えますので制限します。ビールだと一日500ml 程度、日本酒だと1合、そしてウイスキーであれば60ml以内にとどめるようにしましょう。
また、高尿酸血症があると、間接的にメタボリックシンドロームを合併する方が多くなります。高尿酸血症の方は、動脈硬化や脂質代謝異常症、高血圧、肥満などを起こしやすく、食事療法や運動療法など、体重制限を含めた生活習慣病の予防が必要になります。
肥満は高尿酸血症や痛風の他にも、整形外科的疾患である「変形性関節症」のリスクにもなりますので、適度な減量を心がけてください。
余談ですが、カロリー制限を行うと寿命が延びることが最近の動物実験による研究で分かってきました。サルを用いた実験でも、人間でいう成人病が減ることが判明しました。昔から「腹八分目」といいますが、非常に理にかなっているのです。
減量を行うにあたっては、全体のカロリーを制限することも大事ですが、血糖を急激にあげる炭水化物の制限が注目されています。最近は「グリセミック指数」といって、炭水化物が糖に変化する速度を表す指標がありますが、この指数が高い白米や砂糖などの精製された食物は避け、玄米などの雑穀を中心に食べることがよいと言われています。

最後に

高尿酸血症は、それ自体は症状がないため、なかなか治療のきっかけを持つことが難しいかもしれません。しかし、放っておくと痛風発作や慢性腎臓病などを起こすリスクが高まります。そのため、尿酸値に気をつけながら節制をして、薬物治療と同時に生活習慣をコントロールする方法を身につけることが大切です。

  1. 冨田眞佐子,水野正一:高尿酸血症は増加しているか?;性差を中心に.「痛風と核酸代謝」30巻1号:1-5,2006
  2. Matsuo H, et al. Common dysfunctional variants in ABCG2 are a major cause of early-onset gout. Sci Rep. 2013;3:2014.
  3. Choi HK, et al. Alcohol intake and risk of incident gout in men; A prospective study. Lancet 363: 1277-1281,2004.

(この記事は2013年7月取材時点の情報です)

 

プロフィール

中村 洋

 

こちらの記事は「意気健康 06秋号」の生活習慣病特集に掲載されたものです。