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学校法人日本医科大学

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研究室レポート  分子標的治療薬

Webマガジン 『病気と医学』分子標的治療薬 研究室レポート

 

ワンポイント米国では個別化医療が国策に

米オバマ大統領は2015年1月20日に一般教書演説を行った。その中で科学技術に関する施策として、「Precision Medicine Initiative」を提唱し、2016年度の連邦予算を2億1500億ドル増額することを発表した。いままで個別化医療を説明するためには、「Personalized Medicine」が使われてきたが、今回は「Precision Medicine」という概念が使われたのには理由があるようだ。日本製薬工業協会(JPMA)はウェブサイトで、その背景を詳しく解説している。解説によると、近年の遺伝子解析における次世代シークエンサー解析などの著しい進歩で、個人ゲノムやその他の生体分子情報が精密・迅速に分析されるようになり、疾病の原因や発症の過程が分子レベルでより詳細に理解されるようになってきた。オミックスなど生体分子情報を含めた膨大なデータの解析情報研究に基づいて、患者さんに対してより精密な診断を行い、サブグループごとの治療や予防の確立を目指そうとしている。まとめると「個人の詳細な情報を元にした医療」ということになり、Personalized Medicineを一歩進めたPrecision Medicineで適当であると考えられたようだ。

今回は、個別化治療、最新の肺がん薬物療法について、日本医科大学大学院呼吸器内科学分野准教授の清家正博先生にお話を伺った。

 

ワンポイント肺がんの個別化治療、分子標的治療薬の現在

図1 分子標的治療薬の変遷最近の遺伝子研究の発展により、がんに特有な遺伝子変異が存在することが分かってきた。肺がんの領域では「EGFR 遺伝子変異」「ALK 融合遺伝子」といった遺伝子変異のタイプが存在することが明らかになり、主にこの2つの遺伝子変異をターゲットとした分子標的治療、個別化治療が出来るようになっている。分子標的治療薬の発展は続いており、2002年の「ゲフィチニブ」から2016年の「オシメルチニブ」「セリチニブ」「ラムシルマブ」まで、近年ではほぼ毎年のように新薬が開発されている(図1)。

清家准教授は最新の肺がん薬物療法について次のように語る。「ここ数年は毎年のように新薬が開発されています。これは微生物学、分子解剖学、遺伝子制御学、分析技術が横断的に組み合わされて発達してきた結果だと思います。また治療だけではなく、感度の高い検査方法も進歩してきました。どこの病院でも患者さんの遺伝子を調べて、分子標的治療薬に効果のある方なのかを確認することが容易になりました。今までの薬物療法ですと、手術出来ないタイプの肺がん患者さんは1年を超えて生きられる方は少なかったのですが、EGFRやALKといった遺伝子変異を持つ患者さんに分子標的治療薬を使用しますと、3年~4年の生存期間が延長出来る方が増えました。中には5年を超える方もいらっしゃいます」。

 

ワンポイント日本医科大学が設立した包括的がん治療開発センターとは

文部科学省は、科学技術の進展に寄与する私立大学の研究をサポートするため「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」を行っている。最先端の研究に対して研究施設・設備整備費や研究費を一体的に補助する仕組みだ。日本医科大学もその事業に選ばれ、「Clinical Rebiopsy Bankを基盤とした包括がん治療開発拠点形成」と称するプロジェクトを行っている。「日本医科大学包括的がん治療開発センター」を設立して、全科共通の患者同意書の管理、血清やDNAなどの検体採取、解析、凍結などの業務を専任助手がサポートして研究をしやすくする仕組みだ(図2)。
バンクに登録している患者検体数は平成28年9月末の時点で合計3132、そのうち肺がんは365となっている。論文化するための検体数としては十分な数がそろっているといえる(図3)。図2 包括的がん治療開発センター図3 疾患別検体数

 

 

プロフィール

清家 正博MASAHIRO SEIKE

日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野准教授
日本医科大学付属病院化学療法科部長

【 経歴 】
1992年 日本医科大学医学部卒業
          日本医科大学大学院卒業(医学博士)
1992年 日本医科大学第4内科入局
1994年 慈山会医学研究所付属坪井病院内科医員
2001年 国立がんセンター研究所病理部リサーチレジデント
2003年 日本医科大学第4内科助手
2004年 日本医科大学第4内科講師
2005年 米国国立衛生研究所
(NIH/ NCI/Laboratory of Human Carcinogenesis)留学
2008年 帰国
2010年 日本医科大学付属病院がん診療センター副部長
2011年 日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野准教授
2015年 日本医科大学付属病院化学療法科部長
 

資格:日本内科学会認定内科医/指導医、日本呼吸器学会専門医/指導医、日本呼吸器内視鏡学会専門医/指導医、日本がん認定医機構がん治療認定医/暫定教育医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医
所属委員:日本呼吸器学会代議員、日本肺癌学会評議員 、日本呼吸器内視鏡学会評議員
受賞歴日本肺癌学会篠井・河合賞、日本医科大学賞(研究部門)

 

こちらの記事は「意気健康 19冬号(2016年12月発行)」の研究室レポートに掲載されたものです。
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