CLOSE
CLOSE

ACCESS

学校法人日本医科大学

〒113-8602
東京都文京区千駄木1-1-5

03-3822-2131

学んで、読んで、いきいきけんこう。 意気健康

高齢者に多い病気特集  認知症

Webマガジン 高齢者に多い病気特集 日本医科大学武蔵小杉病院 認知症センター 北村 伸 きたむら・しん 認知症

「認知症」という言葉は以前に比べて一般的になってきましたが、実際に発症した患者さんを抱えるご家族以外は、具体的にはどのような症状があるのか意外と知られていないのではないでしょうか。今回は日本医科大学武蔵小杉病院認知症センターの北村伸(きたむら・しん)先生にお話を伺いました。

認知症とは?

図1:認知症高齢者数将来推計図2:認知症の人と予備軍の数 認知症を一言で表すと「認知機能が低下している状態」で、それにより生活に支障が出ている状況のことです。認知症という病気があると思われている方もいらっしゃいますが、これは患者さんの症状を表す言葉であり、正確には病名ではありません。認知機能に影響が出て、日常生活に支障が出た時に初めて認知症であると診断されるのです。認知症を発症している状態を「ボケる」と表現することがありますが、この症状は主に認知症の約半数を占めるアルツハイマー型認知症のことを指しています。このアルツハイマー型認知症は認知症のなかで一番発症数が多く、脳の神経が変性していくことで起きる病気です。認知症を発症する高齢者は年々増加しており(図1)、現在では65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症かその予備群であるといわれています(図2)。

代表的な認知症について

図3:認知症におけるそれぞれの病気が占める割合一概に認知症といっても、原因となる病気はさまざまです(図3)。ここではそれぞれの病気の特徴についてご説明します。

アルツハイマー型認知症
日本人が発症する認知症の中で、一番発症数が多い病気です。年齢を重ねることにより、発症する可能性が高くなります。そのため、男性よりも平均寿命が長い女性に多い病気となっています。脳の神経の質が変わってしまうことが原因となり起きる病気で、脳に特殊なタンパク質がたまりシミのようなもの(老人斑)が出来ていきます。70歳前後から発症しやすくなり、物忘れなどの記憶障害から、少しずつ特徴的な症状が進行します。一般的に「ボケてしまった」と表される状態は、このアルツハイマー型認知症の特徴が出てきた状態です。人の名前や、昼食を食べたことを思い出せないといったことから、症状が進むと言動が攻撃的になるなど人格が変化したり、紙に書かれた時計の図に針を書き込むことが出来なくなったりするなどのアルツハイマー型認知症特有の症状が出ます。

レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症に次いで患者数が多く、認知症全体の約2割を占めます。記憶障害が出るなどアルツハイマー型認知症ともよく似た症状が現れますが、病気の初期から「幻視」があることが大きな特徴です。この幻視とは「部屋の中に子どもがたくさんいる」というような、現実にはありえないことが多いのですが、本人にはまるで現実であるかのようにはっきりとした姿が見えているといわれています。大脳皮質全体に、「レビー小体」という特殊なタンパク質の固まりが出現することが原因で起こります。

血管性認知症
脳血管障害を起こすことが原因で、脳の神経細胞が死んでしまう病気です。突然、脳梗塞や脳出血を起こし急激に認知症が起きる場合と、小さな脳血管障害を頻繁に起こすうちに少しずつ認知症が進んでしまうケースがあります。記憶力は低下しているが判断能力や理解力はあるなど、「まだら認知症」と呼ばれる症状が出ることも特徴です。脳血管障害の再発を起こさないことが、これ以上認知機能を低下させない一番の対処法です。

前頭側頭型認知症(ピック病や意味性認知症)
前頭側頭型認知症とは、65歳以下の方も発症する可能性がある認知症です。脳の前方に位置する前頭葉と、横の部分にある側頭葉が萎縮することが原因で起こります。ピック病では、脳の神経に「ピック球」という異常構造物がたまっています。症状の特徴は、初期では記憶に影響がみられないことです。まず、人格や性格が極端に変わってしまうという症状が現れることが多く、急に騒がしい性格になったり、逆に何もせずじっとしていたりするなど、躁うつ病と間違われる症状が出現します。意味性認知症は、たとえばハサミなどの日常で使う道具の使い方は分かるのに、その道具の名前や言葉の意味が分からなくなってしまうという病気です。病気が進行するにつれ、保たれていた記憶力も低下していきます。

認知症の検査から治療について

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症はゆっくりと症状が進むのに対して、血管性認知症や頭をぶつけることなどが原因で起きる硬膜下血腫による認知症などは、急激に症状が進むことがあり外科的な手術が必要になることもあります。頭部を打った記憶がある場合や強い頭痛とともに記憶障害が現れる場合には、様子を見ずに急いで受診するようにしてください。認知症の検査では、問診を行うことが病気の切り分けに重要です。本人だけではなく、近くで生活している家族にも、以前と変わった部分やおかしいと感じることなどを確認します。診断において大切なのは、その方が生活する中でどのように病気が進行してきたのかを知ることです。その後、採血やCT、MRI検査をすることによって、原因を確定します。残念ながら、現時点で認知症を治すための薬は存在していません。しかし、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症にはドネペジルなど、症状の進行を遅らせ、生活が出来なくなるほど悪化することを先延ばしにする薬は存在します。私たち医師は、出来る限り今までの生活を保ち自宅で過ごすことが出来るように治療計画を立てていきます。

プロフィール

北村 伸先生
北村 伸SHIN KITAMURA

日本医科大学特任教授
日本医科大学武蔵小杉病院 認知症センター


【 経歴 】
略歴:
1976年 日本医科大学 卒業、日本医科大学第一病院内科 入局
1983年 カナダ国モントリオール神経研究所 留学
1999年 日本医科大学武蔵小杉病院 勤務
2007年 街ぐるみ認知症相談センター 開設
2010年 日本医科大学内科教授 就任
2014年 日本医科大学特任教授 就任

専門分野:
神経内科学、神経疾患の脳循環代謝、認知症の臨床的研究、認知症の社会連携についての研究

資格:
日本神経学会専門医・指導医、日本老年精神医学会専門医・指導医、日本老年病学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医

所属学会、公的役職:
日本認知症予防学会理事、日本脳卒中学会評議員、日本老年医学会代議員、日本認知症ケア学会代議員、日本神経心理学会評議員、日本脳循環代謝学会評議員、認知神経科学学会評議員、川崎市認知症対策まちづくり検討委員会委員長

 

こちらの記事は「意気健康 15号冬号」の巻頭特集に掲載されたものです。