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がん特集  乳がん

Webマガジン:がん特集では、がんに関するさまざまな知識を、自分や家族の為に知っておきたい医学知識という視点でお伝えします。Part. 1「がんの統計」では、がんに関する基本的な情報として、がん全般についての統計・疫学情報について、また、Part. 2「がんの原因と予防」では、がんの発生原因や予防法、前回のPart. 3では、がんの早期発見に欠かせない「がん検診」について、その意義や内容などについてお伝えしました。Part.4からは、細かく分類されるがんについて、その専門的な知識をお伝えします。今回は乳がんです。


Webマガジン 『がん特集』Part.4 乳がん 日本医科大学付属病院乳腺科部長 芳賀 駿介<br />

近年、乳がんは、女性のがんで最も増えてきている病気です。一方で、早く見つけて早く治療すれば、治る率も高く、また乳房を維持したままその後の生活を送ることも出来ます。今回のWebマガジンでは、女性の誰もがかかる可能性のある乳がんについて、日本医科大学付属病院乳腺科部長の芳賀駿介先生(はが しゅんすけ:日本医科大学外科学教授)にお話をお聞きしました。

1. 乳がんの疫学・統計

統計学的には、授乳や出産を経験していない女性は、それらを経験している方に比べて乳がんになるリスクが若干高いといわれています。理由としては、授乳中や出産によるホルモンバランスの変化もありますし、また例えば女性が生活する中で、出産することで乳房が成熟し、授乳をして、その後乳腺が委縮していく、という一連のスタイルから、未出産・未授乳の女性は外れるからではないか、ということも言われています。

ただし、ここで強く強調したいのは、女性であれば誰でも乳がんになる可能性がある、ということです。自分は授乳したからとか、子供をたくさん産んだから乳がんにはならない、という考え方は、早期発見の機会を失うことになり危険です。

図1:乳がん罹患数と死亡者の推移

近年は特に乳がんの患者さんが増加しています。30年前までは、わが国で1年間に女性に発症するがんで最も多かったのは胃がんでした。しかし、現在では乳がんが胃がんを抜いて1位になっています。また日本では、生まれてくる子供の約20人に1人が、将来乳がんになるといわれています。欧米は5人に1人なので、まだ少ないと思われるかもしれませんが、この率は30年間と比べると5倍にもなっています。我が国では非常にはやいスピードで乳がんになる女性が増えているのです。(図1)

ライフスタイルの欧米化わが国の乳がん罹患率(1年間に新たに乳がんと診断される率)が近年非常に増加している理由として最も大きいのは、食生活を含めたライフスタイルの変化です。たとえば動物性脂肪の過剰摂取や飲酒スタイルの変化、未婚率増加や高齢出産など、30年前に比べるとライフスタイルが欧米化していますが、それら生活習慣の変化が、乳がん罹患率の増加に関係していると考えられています。生活習慣が乳がんの発症に影響する好例としては、日系米国人の女性は、日本人女性と比較して、米国白人の乳がん罹患率に近いという報告があります。これは、乳がんの発生には人種ではなくてライフスタイルが大きく関与している一つの証拠と言えるでしょう。

さて、乳がんの発症を年齢別に見てみると、40歳~50歳が一番多く、つぎが50歳~60歳、つまり閉経前後が多い。また最近の傾向としては若い人も増えています。特に30歳代の患者さんも増えていて、全体が底上げされています。

2. 乳がんの症状

視診、触診による異常所見乳がんの自覚症状の9割はしこりで、1割は乳頭から血液が出る血性分泌と呼ばれる症状です。ただし、これらの症状があるかといって、すべてが乳がんにつながる訳ではなく、血性分泌の場合、乳がんと関係があるのは3割程度になります。また、乳がんでもパジェット病という特殊なタイプがありますが、このタイプではしこりではなく、乳頭に湿疹や、糜爛(ただれ)が生じます。なので、皮膚科を受診してもなかなか治らない乳頭の湿疹などの場合は、乳腺科の受診をお勧めします。

自己検診 視診、触診女性が普段から気をつけるべきことを一言でいうと、「自分の乳房を知ること」です。方法としては、自分の乳房を、月に一回は自己検診をするのが良いと思います。毎日触る必要はありませんが、毎月決まった日を決めて触ることをお勧めします。たとえば、閉経前の女性の場合は、生理後7日〜10日後に触るのが良いでしょう。なぜなら、その時期は乳腺が張っていないので、しこりが見つけやすいからです。閉経後の人も、日にちを決めて触りましょう。正しい自己検診の方法を身に付けることが大事です。

3. 乳がんの検査:「マンモグラフィ」と「超音波検査」

図2:乳房の構造乳がんの自己検診はとても大事ですが、上記の症状がない場合、自分で見つけることはできません。そのため、定期的に乳がん検診を受けることをお勧めします。

検診では、「マンモグラフィ」と呼ばれる、乳房に特化したレントゲン検査を行いますが、この検査では自己検診で触れないがんや、しこりを作らないがんを見つけることが出来ます。たとえば乳がんを表す状態に「石灰化」があります。これは、がん細胞が死滅したあとに成分が残って、カルシウム、つまり石灰が集積する状態ですが、乳がんのひとつの目安になります。石灰化は触診では分かりませんが、マンモグラフィでは確認できます。

ここで、乳がんの進行度について少しお話しすると、乳がんには大きく分けて2つのタイプがあります。「非浸潤がん」と、「浸潤がん」です。乳房の中には乳管と呼ばれる管があり(図2)、母乳を乳頭に運ぶ役目がありますが、非浸潤がん、というのはがん細胞が乳管の中にとどまっている状態を言います。この段階の乳がんは、乳管を破っていないので、転移を起こすことはありません。この状態、すなわち非浸潤がんで見つかるものは、全乳がんの15%です。一方で、浸潤がんというのはがん細胞が乳管を破って他に浸潤した状態を言います。この場合は、リンパ節や血流に乗ってがん細胞が転移している可能性がでてきます。

図3 ステージ(病期)分類と5年生存率

我々としては、乳がんが転移をしていない状態、すなわち非浸潤がんの状態で見つけて治療をしたい。または、乳管を破っていても、少なくともしこりが2cm以下でリンパ節へ転移していない浸潤がんの状態で見つけたい、と考えています。なぜなら、これらの状態はいわゆる病期Ⅰの「早期乳がん」と呼ばれて、治療成績も良く、8割〜9割が完治するからです。(図3)
ただし、これらのがんは早期であるが故に自己検診では見つけにくく、そのためマンモグラフィが欠かせません。早く見つけ、治療を行う為に、女性の方たちにはぜひ、日頃の自己検診に加えて、乳がん検診を受けてほしいと思います。

マンモグラフィ、白く円形に写る乳がんさて、検査の基本はマンモグラフィですが、ここでひとつ注意していただきたいことがあります。それは、若い女性や、乳腺組織が豊富にある方の場合は、マンモグラフィのみでは乳がんを見逃す可能性があることです。乳腺組織が豊富にある状態を高濃度乳腺と言いますが、若い方や体質的にこのような状態の方がいます。この場合、マンモグラフィでは、がんが乳腺組織と重なって見えにくいことがあります。なぜかというと、マンモグラフィではがんは白く映るのですが、乳腺組織も白く映るため、乳腺が多いと、がんと乳腺の違いが分からず、しこりが見落とされる可能性があるからです。なので、30代、40代の方はマンモグラフィに加えて、しこりの発見を得意とする「超音波検査」の併用をお勧めします。

超音波検査はしこりを見つけるのが得意なのですが、しこりのない乳がんや、石灰化は見逃します。一方、マンモグラフィはしこりのないがんを見つけるのが得意ですが、高濃度乳腺だと見逃しやすい。それぞれ長所と短所がありますので、特に若い方は両方行うのがベストだと思います。

4. 乳がんの検査:「穿刺吸引細胞診」と「針生検」

マンモグラフィや超音波検査でがんが疑われた場合は、診断を確定する為の検査を引き続き行います。検査は主に2つあって、1つは「穿刺吸引細胞診」と呼ばれる検査です。これはしこりに細い針を刺して細胞を吸引してきた後に、顕微鏡でがん細胞の有無を確認する検査です。もう1つは、「針生検」と呼ばれる検査で、最近よくやられている検査です。針生検では、もう少し太い針をピストル型の機械で刺して、しこりの組織の一部を採取してきます。それを顕微鏡でみることで、がんの有無を確認します。針生検の場合は、局所の麻酔が必要になりますが、細胞診の場合は、麻酔が必要ないことも多いです。ただし診断の精度としては、やはり組織をとってくる針生検の方が高いです。これらの検査はしこりがある場合に行われますが、他には、非浸潤がんで、しこりを形成していない場合は、「マンモトーム生検」と呼ばれる検査が行われます。これは画像上、がんが疑われる石灰化の一部を、X線透視下で針を刺して組織をとってくる検査です。この検査には皮膚を2mm程度切開する必要がありますが、以前の、切って組織を取る切開生検と比べると患者さんには低負担で行えるようになりました。

5. 乳がんの治療法

図4 乳がんの治療法治療法の基本は手術となります。ただし、乳がんは抗がん剤や放射線療法が良く効くがんであるため、がんの進行度合いに合わせてこれらを組み合わせた「集学的治療」が行われます。(図4)

治療の組み立て方には様々な方法がありますが、たとえば手術に関していうと、大きく2種類の手術方法があります。1つは乳房全体を切除する「乳房切除術」。もう1つはしこりを含めた乳房の一部分のみを切除して、乳房を残す「乳房温存療法」です。(図5)

図5:乳房切除術:胸筋温存乳房切除術

乳房切除術では、通常はしこりの上の皮膚を含め、乳房の組織をすべて切除します。以前は乳房の下の大胸筋や小胸筋も取っていましたが、1980年頃より筋肉を残して乳房を切除する方法が行われるようになり、1985年からは乳房温存療法も始まりました。昔は切除する範囲が大きければ大きいほど良い、と言われていましたが、現在では乳房を温存しても成績が変わらないことが分かってきました。そのため近年は乳房温存療法が増えていて、昨年の統計では4割が乳房切除術、6割が乳房温存療法となっています。(図6)

図6:乳がんの手術法の変遷 では、どのような乳がんであれば、乳房を温存できるかといいますと、乳房の大きさにもよりますが、一般的にはしこりの大きさが3cm未満であることが条件です。また、MRIなどによって、しこりがどの程度広がっているか、しこりを局所的に取った後でも乳房の形が損なわれないか、などを判断します。予想される手術後の乳房の形に関しては、ある程度患者さんが満足するものである必要があります。といいますのも、乳房温存療法では、残された乳房におけるがんの再発を防ぐ為に、手術後に必ず放射線療法を行います。そして、放射線を当てた乳房は、その後に形を変えることは出来ません。ですから、患者さんが「私はこんな形の乳房はいやです」、といっても放射線を当ててしまった後では直せないのです。乳房温存療法を行う際は、手術後の乳房の形について、手術前に患者さんとよく相談したうえで決めていくことが大切になります。

乳房温存療法に関してですが、当院では手術中に、しこりと一緒にその周辺約2cm程度の組織を切除して、それを顕微鏡で病理検査します。この検査によって、がんを残さない安全な温存療法が可能になります。もしがんが残っている場合は、乳房切除術に変更する場合もあります。乳腺の病理診断は非常に難しく、通常はなかなか手術中に病理検査を実施しているところも少ないのですが、当院では手術中に病理検査が出来ることで、患者さんの負担は大きく減ります。というのも、手術の後に病理検査を行う場合は、その結果が手術中には分かりませんので、場合によっては温存療法を実施したにもかかわらず、実際にはがんが取りきれていないことが判明して、後日再手術になる可能性もあるからです。

また、当初温存療法を予定しても、実際に手術してみると、乳房の形が悪くなる場合や、がんの範囲が広く乳房を残せない場合なども出てきます。事前にMRIや様々な検査を行っても、がんの広がりを正確に診断することはなかなか難しいのです。なので、手術前にしっかり患者さんとコミュニケーションをとることが大事です。十分なインフォームドコンセントを行い、「予定では乳房温存手術を行いますが、手術中に思った以上に広がっていた場合は、乳房切除をしていいですか」と、あらかじめ患者さんに伝えることが大切です。

乳がんのできやすい部位それでは、しこりが3cm以上の方はどうするかというと、どうしても乳房を残したい、という方には、手術前に抗がん剤を使います。これを「術前化学療法」といいます。目的としては、主に2つあり、1つは、がんをあらかじめ小さくして乳房の温存率を高めようとすること。もう1つは、がんが3cm以上あるものやリンパ節転移のある程度進行しているものは、治療の一環として、手術後に抗がん剤を使うことが多いのですが、術前化学療法は手術前に抗がん剤を投与することで、その効果があるかどうか分かるという利点があります。また、そのがんのもつ性格を化学療法を実施する前に調べることも大切です。術前化学療法は約半年を必要とすることから、家族と医師のサポートが必須になります。

患者さんの多くは、乳房の温存を希望されます。それも形良く残したい。ここで知っておいて頂きたいのは、乳房を全部取るから完治するとか、乳房を残すから再発しやすい、ということは全くないということです。きちんとしこりを取りきれれば、両者に再発率には差がない、ということを知って頂きたいと思います。

6. 乳房再建術

もう一つ、乳房切除術をしたあとに乳房再建という方法があります。組織移植や、人工乳房など、まだ保険適応になっていないもの含めてありますが、患者さんにはそのような選択があることもお話をする必要があります。方法としては、乳がんの手術中に行う一期再建術と、乳がんの手術後にある程度時間が経ってから行う二期再建術があります。それぞれ一長一短がありますが、それを含めて患者さんにはお話しするようにしています。女性に取って乳房があるのとないのでは大きな問題です。私自身は、現在人工乳房の保険適応の早期実現に向けて、シンポジウムや厚生労働省への働きかけなど、さまざまな活動を行っています。

7. センチネルリンパ節生検

センチネルリンパ節生検センチネルリンパ節というのは、がん細胞が最初に到達する領域リンパ節のことで、「見張りリンパ節」とも言われています。なぜこのリンパ節が注目されているかというと、このリンパ節を手術中に調べて、がん細胞がそこまで到達していない、ということが分かると、それ以降のリンパ節を切除する必要がなくなるからです。以前は、乳がんの手術では脇の下のリンパ節(腋窩リンパ節)も一緒に全部取っていました。しかし実際は腋窩リンパ節の7割には転移がないにも関わらず取っていたのですね。腋窩リンパ節を切除してしまうと、患者さんはリンパ浮腫で手がむくみ、手術後にリハビリテーションも必要になってきます。なので、腋窩リンパ節まで転移していないのであれば、取らないにこしたことはない訳です。センチネルリンパ節生検というのは、腋窩リンパ節を取らなくても良い患者さんを見つける方法として最も大切なものです。

実際の方法としては、手術中に放射線同位元素や色素を乳輪の皮内に注射し、青く染まったり、放射性同位元素が取り込まれたリンパ節を探し出し、それを切除し、その場で顕微鏡診断をしてもらいます。そこで転移がない、ということになると、それ以降のリンパ節で転移している可能性はきわめて低いので、腋窩リンパ節を取らなくてすむのです。センチネルリンパ節生検は、患者さんにとっては非常に利益が大きいと思います。まず腋窩リンパ節が残ることでリハビリが必要なくなりますので、手術後2、3日で退院できるようになります。入院期間としは全体で5日間程度です。なので、医療費も安くすみます。また、腋窩リンパ節を切除する副作用としての上腕内側の知覚障害やリンパ浮腫も生じません。恩恵は大きいと思います。これが昨年の4月に保険を通りましたので、今では全国で行われています。

センチネルリンパ節生検の必要性

8. セカンドオピニオン

イメージ:セカンドオピニオンセカンドオピニオンには、主に2通りあり、1つは診断が正しいかどうか、もう1つは治療法が適切かどうか、についてのセカンドピニオンです。私もセカンドオピニオン外来を行っていますが、相談で多いのは、医師から患者さんへの説明不足に関して、です。たくさん選択肢があるにも関わらず、医者が方針を一方的に押し付けているケースがあります。また、患者さん自身が、ご自分が乳がんであることを受け入れられないケースで、セカンドオピニオンにいらっしゃる方もいます。そのような方には、ご自分が乳がんであることを、あわてないでゆっくり受け入れるようお話しし、納得できた時期に、納得できる医療機関で治療を受ける事をお勧めしています。患者さんも、ご自分の命ですので、遠慮なくセカンドオピニオンを受けられたら良いと思います。色々な医者の意見を聞く事は大事だと思います。乳がん治療についてどこで行うか、という事に関しては、医療機関選びの目安として、乳がん学会のホームページから専門施設、専門医のいる施設を探すのがひとつのきっかけとなると思います。また、乳がんは産婦人科の領域であるとお考えの方も多いようですが、乳がんは外科が担当です。これはお伝えする必要があると思います。

9. 再発予防

再発予防の目的はがんが画像などで目に見える前にたたいてしまおう、という事ですが、がんの種類と進行具合によって対処の仕方が異なります。一般的にはホルモン剤と抗がん剤で予防的治療を行います。ホルモン剤が効く方は6〜7割ほどいらっしゃいます。手術後にどのような再発予防を行うか、に関しては、現在は主に切除したがんを検査して、決めていきます。まず、ホルモンに依存しているタイプかどうかを見ます。ホルモンに依存するがんであれば、再発予防としてホルモン療法を行います。また近年はHER2(ハーツー)という、がんの増殖に関係する遺伝子が同定されて、その遺伝子が陽性の乳がん患者さんには、「ハーセプチン」という分子標的薬が、がんの増殖にくさびを打ち、再発予防効果がある事が分かっています。なので、HER2が陽性のがんなのかどうかを調べ、陽性の場合はハーセプチン療法を行います。もし、上記のいずれも陰性の場合は、再発リスクがどの程度あるかを見極めながら、従来の抗がん剤を用いて再発予防を行います。「再発を予防できた」、とする時間的な目安は治療から10年とされています。乳がんは種類が多く、治療法も多岐にわたる為、一概に10年たったら再発しない、とは言えないのですが、通常は2、3年を過ぎると再発率は下がってきます。なので、まず5年はしっかりと病院に通って再発予防を行い、その後は1年に1度は外来を受診して経過を観察するのが良いと思います。

10. 最近のトピックス

最近は、乳がんに関する複数の遺伝子を調べる事で、再発する可能性を予測する事が可能になりつつあります。たとえば米国で開発された「オンコタイプDX」という遺伝子検査は、乳がんに関係する20以上の遺伝子の発現具合を調べる事で、患者さんの再発率をスコア化します。なので、再発スコアが高いと予想される患者さんには抗がん剤を使用し、低い患者さんには必要がない、などと再発予防法がより個別化できる事になります。米国ではとても流行っていますが、日本ではまだ保険が認められていません。また、家族性乳がんという種類の乳がんがありますが、それには「BRCA」といわれる遺伝子が強く関与している事が分かっています。米国のデータでは、家族性乳がん家系で、BRCA遺伝子に変異があると、乳がんの生涯罹患率が非常に高くなることが分かっています。なので、米国ではこの遺伝子に変異がある方には、まだ乳がんになっていなくても、予防的に乳房切除を行う場合もあります。

11. がん検診の受診率を上げるために

日本の公的ながん検診受診率は20%台と、米国に比べると低いですが、会社検診や人間ドックなどを入れるともう少し高くなるとは思います。マンモグラフィは痛いからいやです、という人がいますが、1年に一度くらいは我慢して受けてほしいですね。理想としては、ご自分の母親が乳がんであれば、30歳から受けてほしいと思います。そうでなければ35歳からで良いかもしれません。ただ、私がよくいうのは、「早く見つけて、命と乳房を守りましょう」。がん検診を受けて早く見つかれば、命も守れるし、乳房も守れる、ということです。

(この記事は2012年5月取材時点の情報です)

プロフィール:日本医科大学付属病院乳腺科部長 芳賀 駿介

 

こちらの記事は「意気健康 02秋号」のがん特集に掲載されたものです。