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がん特集  子宮頸がん

Webマガジン:がん特集では、がんに関するさまざまな知識を、自分や家族の為に知っておきたい医学知識という視点でお伝えします。Part. 1〜3では、がんに関する基本的な情報として、がん全般の統計・疫学情報、がんの発生原因や予防法、がんの早期発見に欠かせないがん検診について、その意義や内容をお伝えしました。Part.4からは、細かく分類されるがんについて、その専門的な知識をお伝えしています。今回は子宮頸がんです。

Webマガジン 『がん特集』Part.9 子宮頸がん 日本医科大学産婦人科学准教授 鴨井 青龍<br />

女性であれば、誰でもかかる可能性のある病気が、子宮頸がんです。子宮がんは、がんが発生する部位によって、「子宮体がん」と「子宮頸がん」にわけられますが、子宮頸がんは子宮の入り口の子宮頸部にできるがんです。今回のWebマガジンでは、特に最近若い女性に増えている、子宮頸がんについて、その原因、検診の意義、治療法などを、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の鴨井青龍先生にお話をお伺いしました。

子宮頸がんの原因・予防

図:1 子宮のイメージ図:子宮頸がんでは、HPV(ヒトパピローマウイルス)と呼ばれるウイルスが、主に性交渉を介して女性の子宮頸部の粘膜に持続感染することで、子宮頸部の細胞ががん化して発症する、と考えられています。HPVは、現在100種類以上の型が確認されていますが、その中でも発がん性が高いと考えられている「高リスク型」のHPV、特にHPV16型とHPV18型が、子宮頸がんの主な原因であることがわかっています。

100種類以上あるHPVのほとんどは、たとえばインフルエンザウイルスのように、多くの場合は感染をしても症状も出ずに自然消滅します。しかし、一部のHPV、特に高リスク型と呼ばれる13種類前後のHPVは、感染後に子宮頸部の細胞に取り込まれて持続感染し、細胞に遺伝子変異を起こして発がんさせることが分かっています。一方で、高リスク型のHPVに感染した全員が子宮頸がんになる、ということでもないため、子宮頸がんの発症にはHPV以外の要因も考えられます。

それでは、HPVが子宮頸部に感染してから何年でがんが発症するのでしょうか?正確な年数については、はっきりは分かっていませんが、一般的にはHPV感染後に急激にがん化するのではなく、5年から10年をかけて、ゆっくりがん化が進むと考えられています。ただし、一旦がん化してからは、急速に進行することがわかっています。そのため、進行する前の段階、すなわち早期がんの状態で見つけることが非常に大事です。

いずれにしましても、子宮頸がんは性交経験がある女性ならば、誰もがかかる可能性のあるがんです。そのため、近年は性交渉の低年齢化とともに、20代後半から30代の若い女性の罹患率が増加しています。若い女性に限っていえば、乳がんよりも罹患率が高く、20代、30代の女性がかかるがんの中では、もっとも罹患率が高いがんになっています。一方で、子宮頸がんは、他のがんに比べるとその原因が解明されており、また検診によって早期発見できれば子宮の温存など、比較的治療がしやすいがんでもあります。ですから、特に若い女性は、パートナーができたら常にHPVに感染するリスクがあることを念頭に、検診などで定期的に検査をすることをお勧めします。わが国では、子宮頸がんの公的な検診は20歳から受けることができます。他の公的がん検診の対象が40歳からであることを考えると、子宮頸がんが、いかに若年層の発症率が高いかがわかります(図:2)。

図:2 子宮頸がん検診

子宮頸がんは、ウイルス感染が原因です。そのため、インフルエンザ対策で手洗いやうがいをするように、子宮頸部をお風呂で洗い流せば、感染防御ができるのではないか、と考えられるかもしれませんが、なかなかそう簡単にはいきません。ただし、この病気はウイルスによる接触感染が原因であることは間違いないため、たとえば妊娠目的以外では、性交渉時にコンドームでプロテクトする方が、感染の機会が減ることは事実です。また最近では、感染予防としてHPVに対するワクチンが認可されています。現在ではHPV16とHPV18に対するワクチンが承認されています。日本でも自治体によっては10歳〜15歳の小中学生に対して公費負担でのワクチン接種が始まっていますので、今後は若年層での罹患率の低下など、効果が出てくることが期待されます。

一方で、感染予防ということであれば、本来であれば、性交渉のパートナーである男性側も感染予防をする必要があります。しかし、現状では財政的な理由もあり、公費負担による子宮頸がんワクチンの対象はたいてい小中学生の女性のみが対象となっています。ちなみに、男性においては、HPV感染は陰茎がんの原因と考えられていますが、陰茎がん自体の発症数は非常に少ないのです。そのため、HPV感染後のがんの発症メカニズムには、男女で性差があると考えられています。

子宮頸がんの症状

図:3 子宮頸がん検診受診率早期の子宮頸がんでは、初期症状といわれるものは、ほとんどありません。がんが進行した場合は、がん自体から出血がみられることがありますが、この症状が出る頃には、通常、がんはすでに進行した浸潤がんの可能性があります。進行したがんですと、治療する場合でも手術でしっかりと切除する必要が出てきますので、子宮を残すことが難しくなります。また手術に加えて放射線照射が必要なこともあります。したがって、将来的に妊娠出産を考えている方は、少なくとも早期がんの状態で見つかるように、20歳を超えたら検診を受けてほしいと思います。早期がんでは症状がありませんので、初期で見つけるためには検診しかありません。ちなみに、世界と比べると、日本人は子宮頸がんに限らず、がん検診を受ける人が少ないことが問題となっています。政府もキャンペーン等で普及活動を行ってはいますが、まだまだ受診率は低い状況です。低受診率の原因としては、経済的な理由よりは、知識、意識の問題が大きいと思います。子宮頸がん検診についても、欧米とはかなり差がありますので、これからは欧米並みに検診率をあげることが課題だと思います(図:3)

一方、進行した子宮頸がんになると、先ほどの出血の他にも痛みが出てくる場合もあります。いずれにしましても、生理以外の出血や、性行為時の出血など、いつもと違う出血が見られたら、すぐに産婦人科を受診していただきたいと思います。

子宮頸がんの検査

図:4子宮頸がんの主な検査子宮頸がんの検査としては、まず検診における「細胞診」と呼ばれる検査があります。これは、実際に綿棒などで子宮頸部をこすって細胞の一部を取り、顕微鏡を用いてがん細胞の有無を観察します。細胞診には痛みは全くありません。ここでがん細胞がみられた場合は、次にコルポスコピー(腟拡大鏡)を用いて、今度は細胞だけでなく、子宮頸部の組織の一部を2〜5mm程度の塊として取ります。麻酔をかけないため少し痛みはありますが、これによって組織診断を行い、子宮頸がんについての確定診断を行います(図:4)。

他には、まだ全てが保険診療にはなっていませんが、細胞のHPVを直接チェックする検査もあります。たとえば、上述のように検診では細胞診という検査を行いますが、検体のなかには、顕微鏡で観察しても明らかにがん細胞とは言えないけれど、一方で完全な正常細胞とも言えない、という場合があります。その場合、たとえば実際にその細胞がHPVに感染していることが分かれば、子宮頸がんの可能性が高いので、その後詳しい検査をすることもできます。一方でその細胞にHPVがいないことが分かれば、少し時間をおいて再検査をしましょう、という提案もできます。そのため、HPVを調べることで、細胞診で判定が難しいときに、その後の検査方針についてより科学的な判断ができることになります。ただし、現在では財源の問題もあり、現状の公的検診では細胞診のみとなっています。私的検診によっては、HPV検査は別料金によるオプションになっていることが多いようです。

また、子宮頸がん検診は、どうしても場所が場所だけに若い女性には抵抗感があることも否定できません。そこで自己検診と言って、郵送でキットが送られてきて、自分で細胞を取って調べる方法もあります。ただし、医師による検診と比べると精度は落ちますので、やらないよりはやったほうが良いですが、やはり20歳を過ぎたら、定期的に子宮頸がん検診を受けることをお勧めします。

子宮頸がんの治療について

早期がんの治療

図:5 円錐切除術これまでの流れを整理しますと、まず検診などの細胞診検査によって、がん細胞の有無について判定します。そこで子宮頸がんの疑いがあった場合は、その後、コルポスコピーによる組織検査で確定診断をします。

子宮頸がんと診断されると次は治療になりますが、治療法は、がんの進行程度によって変わります。初期の場合は円錐切除と言って、子宮頸部のがんのある部分を含めて円錐形に大きめにくり抜きます。また最近はLEEP(リープ)といってループ状の器具を用いて、高周波を用いて病巣を切除する方法があり、病巣をそぎ落とすようにくり抜く感じになります。この方法ですと、入院せずに外来で麻酔下に処置することもできます。初期の場合は、ほぼそれで治ります。もちろん再発率はゼロではないので手術後も定期的にフォローはしますが、一般的にはきちんと取れていれば、まず再発はありませんし、この場合は子宮が残りますので、将来妊娠、出産も可能です(図:5)。

また施設によってはコルポスコープで観察しながら、レーザーで施術することもあります。ただし、この方法ではがんを取り残す可能性もあり、技術にかなりの専門性を有するため、実施している施設は限られています。

円錐切除が可能なのは、がんの進行程度としては、非常に早期の段階になります。子宮頸がんはその進行度合いによって、ステージ(病期)に分類されるのですが、円錐切除の対象となるのは、ステージ0とステージⅠA1となります。ステージ0というのは、がんが上皮内、すなわち基底膜という粘膜の一番下にある防波堤のような膜よりも内側にあるもので、別名上皮内がんとも呼びます。またステージⅠAというのは、がんが基底膜の外まで浸潤しているものですが、肉眼では分からず顕微鏡でないと分からないもので、別名微小浸潤がんと呼びます。ステージⅠA1は、ステージⅠAのなかでも特に浸潤が浅いがんとなります(図:6)。

図:6 子宮頸がんの進行期 

進行がんの治療

一方、がんの進行程度が進むと、円錐切除では難しくなり、子宮を全部摘出する手術が必要になってきます。また、進行すると、子宮のみならず、周辺のリンパ節にもがんが転移してきますので、その場合は骨盤リンパ節郭清術といって、がんの転移経路のリンパ節を取る必要があります。さらに場合によっては卵巣も同時に取る必要があります。いずれにしましても、このような手術では、残念ながら、出産はあきらめる必要がでてきます。また後遺症としては、リンパ節郭清により、リンパ浮腫がおきて足がむくむ、などの可能性があります。

進行がんの手術に関しては、以前であれば根治性を重視して骨盤の周りの組織を、神経を含めて全て切除していました。そのため、膀胱に通じる神経も切除した結果、手術後に神経性の膀胱直腸障害が起きてしまいました。膀胱直腸障害では特に膀胱の障害、すなわち排尿障害が大変だったので、排尿をコントロールするために、術後には膀胱訓練を行い、とても大変でした。以前では子宮頸がんの手術では、排尿障害はリンパ浮腫と並んで2大合併症といわれていました。しかし最近では以前に比べて自律神経の走行などが詳細にわかってきたため、神経をできる限り温存する手術が進んできました。神経を残す手術をすると、手術時間は余分に1時間ほどかかりますが、それを行うと結果的に排尿も出来ますし、入院期間も10日ほどですみますので、われわれとしては、しっかりやるようにしています。以前の入院期間が1ヶ月もあったことを思うと、患者さんにとっては排尿機能も維持できますし、非常によい方向だと思います。

手術後は、切除した子宮を病理検査に出し、2週間程度で結果が出ます。切除した子宮の中にがんが収まっていれば、完全に取りきれたことになりますので経過観察となります。もし子宮の外側にもがんがある可能性が高い場合は、術後補助療法と言って、放射線治療や抗がん剤治療を手術に引き続いて行います。現在は婦人科腫瘍学会で治療ガイドラインが出来ていますので、基本的にはそれに沿って治療を実施しています。

また特殊な場合になりますが、妊娠の可能性を残すため、子宮頸部全摘手術といって、子宮頸部のみを広範に切除して、子宮体部は残し、残った子宮体部と腟をつなげる方法もあります。ただし、実際そこから妊娠するのはなかなか難しいのが現状です。子宮が残っていることは女性にとっては大きい意味を持つことが多いため、手術自体には意味があると思いますが、妊娠の確率に関しては難しい状況です。

手術以外の治療方法としては、放射線治療と抗がん剤治療があります。海外ではむしろ手術ではなく放射線治療を行うことが多いのです。日本でも初回治療として放射線治療を行う場合と、手術後に追加的に行う場合があります。また、進行がんでは放射線治療と抗がん剤治療を併用することがありますが、放射線治療単独に比べて、治癒率が良くなっていることが分かり、広まっています。

治療後の再発については、早期がんの場合は、ほとんど見られません。しかし、進行がんでは再発することがあります。再発した場合は放射線治療か抗がん剤治療を行いますが、放射線治療の場合は、一度照射した部位には再度の照射はできません。その場合は抗がん剤を使います。当院では、一般的には治療後10年間は定期的にフォローを行っています。

治療前の説明について

治療を始める前には、インフォームドコンセントと言って、患者さんに現状を説明し、治療法としての選択肢をお話して、最終的には患者さんご自身に治療方法を決めてもらいます。ただし、ご自分では決められない方もいますので、その場合は、我々の方で患者さんの社会的背景などを考え、いろいろな治療法を提案して、一緒に決めていきます。

やはり、どのような治療法を選ぶか、ということは女性にとっては大きな選択になりますので、悩まれると思います。ただし、進行がんの場合は、あまり悩む期間が長いとその間に進行してしまいます。そのため、診断してから、だいたい1〜2ヶ月の間には、治療を開始する必要があると思います。当院では、一般的には、診断後は検査等をしながら、約4週間〜6週間で治療が開始されることが多いです。

いずれにしましても、患者さんと我々医療チームの信頼関係が出来ていないと、前には進めません。そのため、多少時間がかかっても、理想的な治療を行うためには患者さんとの信頼関係を確立することが大事だと思っています。

治療までのスケジュール

一般的な当院の流れですと、まず検診の細胞診でがん細胞を指摘された方が当院に紹介されてきます。また、2009年から新しい細胞診の判定方法(ベセスダシステム)が導入されたのですが、この細胞診の結果、明らかながん細胞とは言えないが、判定が難しい細胞(Atypical squamous cells of undetermined significance: ASC-US、アスカス)が出た方の多くも、当院に紹介されます。紹介された方は、当院でコルポスコープを行い、子宮頸部の組織を3、4カ所取り、その結果が約2〜4週間で判明します。その結果、初期の段階、いわゆる高度異形上皮や上皮内がんと診断された場合は、その後、外来や処置室で麻酔をかけて円錐切除を行います。組織診断から円錐切除までは2、3週間かかりますが、手術そのものは1時間以内に終了します。手術後は2週間ほど出血が見られますが、自然に止まり、日常生活は変わりなく送ることができます。患者さんによっては、2、3週間おりものが増える方もいらっしゃいますので、その間の性交渉はできません。また、頻度はとても低いのですが、手術後の合併症として、頚管閉鎖といって、子宮頸部が癒着してしまい、生理の血液が排出できずに腹痛を生じることもあります。その場合は再開通の手術が必要になります。初期のがんの場合は、手術後は少なくとも1度は外来でチェックしていただきます。このとき、細胞診を行い、異常細胞がないことを確認して、手術できちんと取りきれたかどうか判定します。

進行がんと診断された場合は、事前にMRIや PET-CTなどの画像検査を行い、子宮以外の全身の状態を検査します。 また腎盂造影という検査も行います。これは、子宮のすぐ近くには尿管が通っていますので、手術で傷つけないように、尿管の走行を確認するために行います。その他にも、泌尿器科の先生に膀胱を見ていただき、手術が膀胱に影響するかどうかを確認します。ですから、早期がんにくらべると、進行がんでは検査等で少し時間がかかります。ただし、入院自体は手術の2日前程度にしていただき、クリニカルパスと呼ばれる工程表に沿って進めていきます。

セカンドオピニオン

最近は治療ガイドラインというものがあり、治療方法が全国的に標準化されてきていますので、だいたいどの施設でも同じ治療方針になると思います。ただし、同じ方針であっても、別の医師が説明することで患者さんに正確に伝わることもあります。その結果、患者さんの納得感が増すこともありますので、私の患者さんの場合は、時間的に余裕がある時は、他の先生に聞いてきてもらいます。ただ、セカンドオピニオンは、現状ではそれなりに時間がかかります。ですから、進行がんの場合はその間に悪化してしまうことがあるため気をつける必要があります。

最新のトピック

日本医科大学では宮下正夫教授とセントシュガーがん探知犬育成センターと共同で「がん探知犬」の研究を実施していて、当科も協力しています。これはがん患者さんの発見に犬の嗅覚を利用する、という研究で、被験者の呼気あるいは尿のサンプルを探知犬にかがせて、探知犬ががんのにおいを認識するとサンプルの前でお座りして知らせます。的中率がきわめて高いのです。この研究では、最終的には犬に頼らず、におい成分によってがんを見つけることを目指しています。がん探知犬のすごいところは、初期のがんでも分かるところです。もし成功すれば、検診も変わってくると思います。

子宮頸がんに関しては、現在HPV16型と18型で全体の65%を占めていることが分かっていますので、今後ワクチンの効果が出て、将来は患者数が半分以上減っているかもしれません。また、今後他のHPV型のワクチンが増えれば、更に患者数の減少に寄与する可能性があると思います。

(この記事は2012年6月取材時点の情報です)

日本医科大学産婦人科学准教授 鴨井 青龍

こちらの記事は「意気健康 02秋号」のがん特集に掲載されたものです。